ミーターの大冒険 余白 第4話 空間的に遍在
ヴァレリー 無事に珪化木の化石にもお会い、とっても楽しい旅でしたね。ハニスさんのお体も健康になられ、めでたいことです。それでは、わたしはアース・オービターに戻って自分の任務を続けます。
ハニスさんは、これからご自身の本来のご使命に戻られるのですね?
ハニス そうさなあ、ひょっこり盗んだ珪化木の化石で商売でもしようか?
それにしても、君と別れるのは、君、約束が違うぞ。
ヴァレリー そうでしたか?わたしの任務は、ハニスさんが健康を回復するまでと思っていました。
ハニスさんは今、完璧な体に戻られました。ので、わたしの今回の任務は完了したものと思われますが?
ハニス 君、珪化木の神秘だよ。かつてアルカディアがつねづね言ったことがある。「この宇宙は神秘で満ち溢れています。わたしたちの知性を遥かに越えています。わたしたちはこのことをかたときも忘れてはならないわね。新しい謎が解けたらね、また新しい謎が訪れる」ってね。
ヴァレリー なるほどです。ごもっともです。ハニスさんの新しい思惑を察知できましたわ。
ハニス 聞かせてもらうかな?
ヴァレリー おそらくですね、ミーター様とイルミナ様のことをお考えでしょうか?
ハニス いや、図星だ、驚いた!君ってどういう機能を!
ヴァレリー いいえ、この機能は、あのアルカディア様のご構想にあらかじめ組み込まれているものですから。
ハニス まあ、いいや、それにしても恐れ入った。
ヴァレリー君、珪化木の商売は、直接的ではない。珪化木になるプロセスで重要なことは、珪化木になる前のその樹木の樹皮や細胞膜の存在のことだ。全く以前の構造模様を変えないで新たな成分(珪素)に完璧に置き換えられる、ということなんだよ。その際、完全に酸素がカットされる。
ヴァレリー つまりですね、停止(ストップ、死)とともに保存と置換が同時に起こるということですね?
ハニス うむ、そうだ。でもそれだけではないぞ、本当に珪化木の商売をしたいと思っている。
ヴァレリー どういうことですか?
ハニス 酸素の供給は我ら生き物にとっては不可欠だ。俺は一回、死にかけた。いわば酸素の供給が止まったと同然だった。
ミーターとイルミナとの関係は、話しを簡単にして言えば、今の俺と君との関係であって、いわば、珪化木の変化プロセスそのものなんだよ。ちょっと違うのは、俺はミーターのようなロボットではないっていうことぐらいかなぁ!
珪化木は地球の地表下に隠されていた。それが地表にあらわれて、今や科学者や自然収集家の注目を集めている。その美しさはまさに神秘だ。
俺はこれから君と、もう一度、ゼロからやり直したい。なんせ待望の地球に来られたんだからな!
ヴァレリー そうですよね、あなたの星、ターミナスから天の川銀河の反対側ですからね!
ハニス 君は機能としては空間的には遍在だ。
君のチーフには俺から直接頼むとしよう。
あとは、この銀河をくまなく駆け回り、諸惑星の復興を手助けする。君は俺の秘書として任命する。
なにせ、「自由銀河再生党」の任務は終了した。これからは、この地球再生をプロトタイプとして、諸惑星を一つづつこなしていくぞ!
ヴァレリー ここまで変貌されるとは、わたしの看護もまんざらでなかったんだわ!
ハニス なに、なんて言ったか?
ヴァレリー 安心しました。ハニスさん、耳が遠くなられました。
ハニス はあ?


コメント