歴史思想書
ミーターの大冒険 余白 第28話 歴史思想書
ヴァレリー ハニス先生、「古代の賢者」についてだいぶ含むことが、おありのご様子ですこと!
ハニス そうだとも!愛する相棒の君(きみ)!
ヴァレリー ここにきて名残りの話には、もってこいの話題の様子ですね。
ハニス はあ、話すとも、話すとも。貴女にご質問する。
ヴァレリー もちろん、なんなりと。
ハニス 貴女のプロトタイプは?
ヴァレリー ご存じの、イルミナ・ダム様ですよ。
その創作者は、オリンサス・ダム様には違いありませんけど、そのイメージ創作は、間違いなく、アルカディア・ダレル様です。
ハニス その通り。では、アルカディアにイメージを起こさせた人は誰だい?
ヴァレリー おばあ様のベイタ・ダレル様です。アルカディアの小説は、ほとんどおばあ様のベイタ様についての生涯と探求書と言っても過言では、ありません。
ハニス うむ、その通り。それでは、ベイタ・ダレルの秘密とやらは?
ヴァレリー ベイタ・ダレルがターミナスの旧ガール・ドーニック屋敷で発見したハリ・セルダン宛ての報告書の写しのことでしょう。つまり、ガール・ドーニックの地球再調査とそこに至る天の川銀河の旧人類の生態についての報告書を解読したことでしょう。
ハニス まさに、そのことについてだが、俺の無茶な仮説を聴いてはくれんかな。
ヴァレリー はい、なんなりと。
ハニス それを仕組んだのは誰だったかということだ。ドーニック屋敷の地下のその地下室に保管したのは、あの「礼儀正しい盟友、ボー・アルーリン」じゃなかったかな!
ヴァレリー はあ~。そうですとも。300年後のベイタ、そして約500年のアルカディアに渡そうとされたあの律儀な科学者、ボー・アルーリン、その人に間違いありません。もちろん、その背後に、ドース・ヴェナビリ様がおられますが。
ハニス そうだね。そうトントン拍子に正解を連発されると、ちょっと張り合いがなくなるなあ!
まあ、冗談だが。
そこまで来たら、もう察しがつくだろう。
ヴァレリー そうですね。わたしの尊敬します導師様。
さ迷えるシンナックス人たちの遺言書の涙の黒い太陽の像と刻まれた文字、そしてそこに至るターミナス図書館に置かれていた本のことが、です。あのハリ・セルダンの孫娘のベリス・セルダンに読ませ、涙の黒い太陽の像に逢わせた、あの事件のことですね。その後、彼女は劇的にガール・ドーニックと出会う。
そしてその本のタイトルが...
ハニス その通り、『ジョン・ナックの歴史思想書』だな。
ヴァレリー ということは、その古代の賢者とは、「ジョン・ナック」ですね。
そして、その後、彼の思想は、シンナックス人に受け継がれたと理解できますね。
ハニス まさに!
ヴァレリー君、今や、古代の銀河の記憶、記録、歴史は惑星ガイアからはじまり、惑星シンナックスによって大幅に復興したとみるべきである。
ヴァレリー ハニス先生、それでは、どうして、ダニール・オリヴォーはガイアとシンナックスだけ「歴史消滅」から外したのでしょうか?
ハニス まさに、まさに。意図的にだよ、ヴァレリー。
ということは、あのガール・ドーニックとベリス・セルダンへ細くとも確実な糸を残した、と考えられる。
そしてそれほど、ダニールはボー・アルーリンの存在に畏敬した、といえる。
ヴァレリー ハニス先生はどこまでご明察なのでしょうか?
わたしとのお別れに際して、この銀河の歴史を解きほぐして頂き、このうえなく光栄に存じます。
かれ、ボー・アルーリンの蝶番の役ということが、ますます光ります!
次話につづく ...
ご参照として、次の『ファウンデーションの夢』第四部「嵐の気配」第1話「涙の黒い太陽」をおすすめいたします。
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