
ミーターの大冒険 余白 第14話 血液循環説
血液循環説(けつえきじゅんかんせつ、theory of the circulation of the blood)とは「血液は心臓から出て、動脈経由で身体の各部を経て、静脈経由で再び心臓へ戻る」という説。1628年にウイリアム・ハーヴェイによって唱えられた。

ハニス ところで、ヴァレリーさん、その二度にわたる世界大戦を終了させた動因について君はご存知かな?
ヴァレリー 戦争なんて誰でも嫌に決まってますよ。戦争して利益を得る武器商人は別として、ですけど。
世界の誰でもが、戦争を憎んで終わらせたのでしょう。もう2度と戦争なんて起こしてはならない、と反省したんじゃないのですか?
ハニス その「人類危機カンブリア紀」のことなのだが、戦うことが運命付けられた人類の性癖からそれを取り除くことは、そう容易ではないのだよ。
誰もが戦争など欲してはいないのは確かなのだが、人類の歴史を見ると絶えず紛争が勃発して、あとからあとから憎しみの連鎖が続いていくのだよ。
その意味でその時代、はじめて地球の人類社会がグローバル化した時代でもある。
ヴァレリー ということは、その当時の世界の人々が、国や地域を越えて地球を一つの世界として意識した、ということなのですね?
ハニス まさにその通り。
地球暦で言う20世紀のことだよ。
銀河暦以前1200年頃の銀河では、各星系に別れてその星域別に覇を唱える中心惑星があった。例えばティラニー帝国みたいにね。
ところが銀河暦0年(地球暦12300年)に近くなると銀河中央の大ブラックホール近くの惑星トランターが銀河全域の支配を確立する。対抗勢力を完全に駆逐してな。
ヴァレリー 今からざっと12600年前ですね。
ハニス 話を地球暦に戻してよろしいかな、暦女どの?
ヴァレリー まあ、暦女って?
ハニス 地球を一つのグローバルとして意識したのを、俺は、「人類危機カンブリア紀」と表現した。この、「人類危機カンブリア紀」は銀河暦零年ころとターミナス暦零年と今のターミナス暦500年過ぎころにも起こってると言っていいだろう。
新しい時代区分だ。今まで切り刻まれてバラバラになった銀河がもう一度再興してきた時代だからね。
ヴァレリー ハニスさん、それには「大マジェラン銀河派遣隊」の出来事が大いに関わっていると言うのですね。
ハニス そうだ!言うことなし。暦女君。
この天の川銀河が、正真正銘に外界を意識したからだ。まさにシンナックスの標語の「移動と新しさの魂!」だね。
ところで、その「人類危機カンブリア紀」を見事に意識したのは誰だっかね、わかるかね?
ヴァレリー そうですね。ハリ・セルダンですか?
ハニス はっきり言って、そうじゃない。
ヴァレリー またハニスさんの好きな謎かけですか?
そういじめないで、教えてくださいな!
ハニス ちょっとだけ勿体ぶって言わしてもらおう。
R ・ダニール・オリヴォーだよ。日々進化し、苦悩してきたロボット、不死の従僕。
日々、新たなり、新たなり。
『大学』
「彼」と呼んでいいなら、そう呼ぼう。
彼はハリ・セルダンの「2つのファウンデーション・システム」に一抹の不安を感じたのだよ。ハリ・セルダンの寿命とサンタンニでの「混沌化」を危惧して、新たな解答を策めて銀河復興の糸口を探る旅に出たんだ。
彼の2万年にわたる挫折と苦悩を通して、彼を制御している「ロボット第零の法則」に一抹の不安を感じてきたのだよ。
彼は、ハリ・セルダンの出身惑星ヘリコン、ガール・ドーニックの惑星シンナックスに到達した。
彼はシンナックスで「証古学」を修めていた非凡な青年を見いだしたのだ。その時彼の感応力は、一抹の不安から一抹の希望へと変換したのだよ。
彼はシンナックス大学の門に刻まれた標語を見ながら、ガール青年が来るのを待ち構えていた。
その標語が「移動と新しさの魂!」だったんだ。
彼はその瞬間、銀河人類が置き去りにしてきた根本問題があるのに気づいたんだ。
ヴァレリー 地球の放射能ですか?
ハニス 素晴らしい!ドンピシャだよ。
ダニール・オリヴォーは、人類にこの難問を解いてもらおうと思った。それが、その時から起こりつつある銀河混沌と無秩序を克服する手立てだと。
ヴァレリー それで不死の従僕さんは地球探索に向かわれたのですね。
ハニス そうだ。その時、乗っていた航宙船の名を「シンパシック・ハーヴェイ号」と新ためた。
「循環理論」の復活だよ、暦女殿!
ヴァレリー 殿?

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