- Espionage
二万年後の銀河 シリーズ
第1弾
ファウンデーションの夢
第六部
ベイタ・ダレル
第8話
エピソード41
Espionage
宇宙船の格納庫に響き渡る警報音。その喧騒の中で、一人の男がゆっくりと歩み寄ってきた。
「その道化師を引き渡してもらおう」
鋭い眼差しの男が名乗る。
「私はハン・プリッチャー。ファウンデーション秘密情報部の大尉だ」
ベイタは身構えた。彼女と夫のトランは、カルガンに着いたばかり。たった一日でこんな騒ぎに巻き込まれるとは思いもしなかった。
「おかしいわね、あなたカルガンの警察部長じゃなかったの?」
プリッチャーは薄く笑った。
「そう見せかけていただけだ。私はインドバー市長の指示でカルガンに潜入し、ミュールの実態を探っている。しかし、単独行動には限界がある」
彼はボボを一瞥し、続けた。
「そんな折、ミュールの元から逃げ出した道化師の騒ぎを目撃した。これはチャンスだ。君たちと行動を共にすることで、一石三鳥になる」
ベイタが眉をひそめた。
「一石三鳥?まず一つ目は、ボボを捕まえること。二つ目は . . . 」
「私も追われている。逃げるなら一緒のほうが都合がいい」
「三つ目は?」
「君たちの動向を探れという指示を受けている」
ボボが割り込んだ。
「奥様、私を尋問して何がわかるというのですか?それより、この男を追い出して、すぐに発進すべきです!」
プリッチャーは不敵に笑い、通信端末をかざした。
「いいのかい?カルガン宇宙警備軍には、すでにこの船を拘束するよう通達してある。私が乗っていれば、暗号通信で解除できるが . . . 」
トランは深くため息をついた。
「やれやれ、ベイタ、君といるといつもこうなる。波乱万丈の結婚生活だなぁ!」
ベイタは腕を組み、しばらく考えたあと、プリッチャーを睨んだ。
「仕方ないわね。あなたが裏切らないと信じていいなら、一緒に行動しましょう。でも、あなたが何か企んでいたら . . . 」
プリッチャーは肩をすくめた。
「心配無用。私の目的はミュールを倒すこと。それは君たちも同じはずだ」
ベイタはしばらく沈黙した後、トランを見た。
「 . . . 飛ばすわよ!」
宇宙船のエンジンが唸りを上げ、カルガンの夜空を切り裂いていった。
次話につづく . . .



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