真実相において不変

2万年後の銀河

ミーターの大冒険 余白 第3話 真実相において不変

ハニス ヴァレリーさん、俺の病、死に至る病というのはな、精神の病なのだよ。俺は、アルカディアの館に逗留することになった数年後、あの惑星イオスでドースさんに会えたのだがね、俺の生涯は、この銀河内で完結するのだと知らされたんだ。あのアンセルム・ロドリック卿は、アルカディアグループでは後発にもかかわらず、大マジェラン銀河への隊長となった。
 俺ときたら、どうだ、この銀河内で依然として「自由再生」運動に従事して、諸惑星間を飛び回っているんだからな。何故俺は行けない?

ヴァレリー そうですね。そのお仕事って、ハニスさんしかできないのでしょう。それはとっても崇高なご使命なのでは!

ハニス それはそうだ。だがなにかどっか腑に落ちない。俺には引退する権利がないのかと思う時がある。
 そこで地球に来た。
 サンタンニで、あるディスプレイで流されていたドキュメントを見た。地球には、珪化木という木の化石があるという。木の成分が抜け落ちて、回りの珪素が木の成分と入れ替わってしまう、というんだ。
 これを見た瞬間、「これだ!」と思った。

ヴァレリー つまり、ハニスさんは珪化木になりたかったんですね。

ハニス まさに、俺にとっての希望と救いの現象そのもの。
 俺はもう枯れかかっている。しかも、未来永劫とは言えないが、ある程度、この銀河で、アルカディアの念願を成就させたい。そしてメドが見えたら、大マジェラン銀河に行ってみたい。

ヴァレリー まあ、お若いこと!感銘いたしますわ。
 実は、なにをいう私も同じ感慨に耽ることがあります。
 なにせ、貴方がヴァーチャル第1号として造られたイルミナさんは、今ではペイリーさんのお体と融合されて、人間様のお感覚に生きておられますからね。

ハニス なるほど、そうか。フムフム。

ヴァレリー 何ですか?どうぞ教えてくださいな。

ハニス もう少しこのプロセスを深堀すれば、こうだ。
 あのアルカディアの思惑についてだがね。
 アルカディアさんはドースさんに促されて、ミーターやオリンサス、そして俺を通して銀河復興の端初を築いた、と。
 アルカディアは、まずイルミナを造り、本人の分身を造った。
 そしてターミナスの役割が一応終了するに及んで、帝国辞書編纂図書館をファー・スター2世号を通して、銀河全域に拡散させ、イルミナをペイリーさんに移して、ご自身を甦らせた、ということさ。

ヴァレリー それは、まあ!
 でもそれって、ちょっと不遜な雰囲気じゃ、ありませんか?

ハニス 実際、それが真実であればね。
 でもそれは、まあアルカディアにだけ許されたと考えるべきだ。
 だがな、その手法は、見習うこともできる。
 ちょっとした応用ができるってことさ。

ヴァレリー どういうことですか?

ハニス 君も言ったよな、ヴァーチャルからちょっと現実化に移りたいと。

ヴァレリー それは、そうだけど...

ハニス だろう!
 それで、この旅が終わったら、修理された俺様の体で、もう一回挑戦してみようと思う。
 行けるとこまで行ければいいさ!
 
 ところで君ってさ、君にも得意な能力があったんだよな?

ヴァレリー そうです。ヴァーチャルは、「真実相において不変」。

ハニス いいぞ。その調子。
 君も分身の術を使って、一方で、このまま仕事を続け、もう一方で俺と一緒にノマドを続けるっていうのはどうだい?

ヴァレリー ありがたいお誘いですこと。
 歓んでやってみたいわ。

ハニス そうきなきゃ!

アーネスト・ヘミングウェイ 「老人と海」より

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