1. ダニールの決意

ダニールの地球探索

  1. 第1話 探索のはじまり
    第一部 ダニールの地球探索

ダニールの決意

静寂の中、ダニール・オリヴォーは微睡んでいた。ロボットである彼に眠りは不要だったが、長い年月を経て、人間と共に歩み続けた彼の意識には、ときおり過去の記憶が波のように押し寄せる。

<人類は移動することによって進歩してきた。移動を止めれば、生の向上も止まる。異なる習慣を持つ者は敵ではなく、貴重な存在なのだ。

古代地球の哲学者、ノース・ホワイトヘッドの言葉が脳裏をよぎる。彼の言葉は、盟友ジスカルドの遺志を継いだ自分の使命を明確にしてくれるようだった。今、宰相という立場を離れ、ダニールは新たな決意を胸にしていた。

時は流れ、ハリ・セルダンも老いつつある。かつて地球で出会ったイライジャ・ベイリーを思わせるその男も、遠からず歴史の舞台から姿を消すだろう。彼の世話はドースが引き受ける。惑星イオスで再生された彼女ならば、ハリを支え続けるはずだ。

ダニールはふと遠い記憶をたどる。二万年前、地球で見た最後の海の光景。あの時の潮騒、夕焼けに染まる波、そして隣にいたイライジャ・ベイリーの姿―。あの交流が、彼の心に一般のロボットにはない感情を芽生えさせた。良いことなのか悪いことなのか、それはわからない。ただ、確かに何かが変わった。

 《あの海がある星を探そう。
 そこには、私が探すべき何かがあるはずだ。》

惑星シンナックス―そこには、地球の太古の海を再生した人々がいるという。もしそうならば、あの海の記憶を持つ者がいるかもしれない。

ダニールは静かに立ち上がった。彼の使命はまだ終わっていない。

次話につづく . . .

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