11. 狂乱

ウォンダとガールの地球探訪

第1話 狂乱

ファウンデーションの夢 第三部 ウォンダとガールの地球探訪

お招きの言葉

わたし Yi Yin のサイエンス・フィクションは、アイザック・アシモフの『ファウンデーション』シリーズを下敷きにしつつ、哲学者ノース・ホワイトヘッドの「移動と新しさ」の思想に貫かれている。

あらすじ

銀河暦12066年──セルダン裁判が始まる前の年。
ロボット・ダニール・オリヴォーは、心理歴史学と二つのファウンデーションを補強するため、人類最古の故郷「地球」を求めて探索の旅に出た。それは、単なる科学的調査ではなく、第零法則の限界を超え、人間の潜在力に賭ける挑戦でもあった。

やがてダニールは、天の川銀河の半球の彼方に、地球らしき海洋惑星を発見する。

その一方で彼は「ヒューミン」と名を偽り、シンナックス大学に潜入し、ガール・ドーニックと出会う。なぜかガールは初対面の彼に心を開き、見いだした知見を滔々と語り出した。その閃きの鋭さに、ダニールはロボットでありながら言葉を失う。

こうして二人の邂逅は、ファウンデーションの新たな叙事詩の幕開けとなる。

ダニールの指示を受け、ガールは彼の多額のクレジット・バッグを抱えてトランターへ向かった。だが到着早々、ハリ・セルダンと共に裁判にかけられ、留置所へと送られてしまう。

その場でセルダンは告げた。
──五百年以内に九割以上の確率で、銀河帝国は滅亡する、と。

本文

第11話 狂乱の法廷

「もとはといえば熱処理工にすぎなかったユーゴ・アマリル。その彼が、やがてハリ・セルダンの心理歴史学を支える片腕になるなど、誰が予想しただろうか。ハリは彼を分身のように愛し、信頼を寄せた。ユーゴは五十五歳──そして、その分身こそが私であった。」
『ハリ・セルダンの生涯』 ガール・ドーニック著

なんという事態だ。

自分の才能で銀河随一の数学者を助けるために、わざわざこのトランターに来たというのに、セルダン教授とまともに話せたのは、ほんの三十分にすぎない。その直後に、まさか裁判へと巻き込まれるとは!

しかも、禁冷計(チン・リンジ)──帝国の公安を握る名高き宰相が、直接出廷してきたのだ。大執政官であり、帝国そのものを統べる男が。これはただ事ではない。ヒューミンさんからも何の予告もなかった。バッグのなかにクレジットがいくら残っていようが、シンナックスに帰る道筋すら見えない。

目の前で繰り広げられるのは、信じがたい光景だった。かつて名宰相デマーゼルに指名されて政務を託され、帝国を背負うはずだったセルダン教授が、今この場でその前任者と共に拘束されている。なぜだ? 一体何が起きているのか?

私も、このまま牢獄に閉じ込められるのか。それとも、帝国の見せしめとして死刑に処されるのか。

混乱する私の耳に、ふと教授の声がよみがえった。先ほど、官憲が踏み込む寸前に、彼は確かに囁いたのだ。

「これは私が仕組んだものなのだ」

 ──仕組んだ? なんということだ。この禿げ上がった老人は、一体どこまで正気なのか。帝国を敵に回してまで、何を企もうというのか。

 私の胸中には怒りと恐怖が渦巻いていた。だが同時に、抗いがたい予感もあった。これは、銀河の歴史を揺るがす序章にすぎないのではないかと。

次話につづく . . .

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