29. 私の彼は宇宙飛行士だった

Tea Tree
  1. 私の彼は宇宙飛行士だった
    ファウンデーションの夢
    第五部 Tee Tree
    第4話 

あらすじ

ダニール・オリヴォーの地球探索は、表向きは古代地球の歴史調査であったが、裏にはもうひとつの銀河復興の秘策を探るという大きな目的があった。同時に、ハリ・セルダンの「心理歴史学」を完成させるだけでなく、新たな工夫を見出すため、シンナックスにいた若き証古学者ガール・ドーニックをセルダンの後継者として育て上げる計画も進められていた。

ガールがトランターに到着した直後、セルダンの裁判に巻き込まれ、窮地に立たされる。しかしそれも、セルダンとダニールが仕組んだ巧妙な大計画の一部であった。やがて彼は、ターミナスへの51番目の執行部員として派遣されることになるが、実質的には組織内で最も重要な任務を担うことになる。

ターミナスへの渡航準備中、ガールは再びセルダンからの新たな指令を受ける。催眠術めいた状況の中、気がつくと彼は見知らぬ航宙船にいた。そこには容姿端麗な女性が立っており、親しげに語りかけてくる。任務は無事完了し、放射能防御シールドに守られながら、二人は荒涼とした地球の大地を踏みしめた。ガールは朧げに広がる光景を眺め、遊ぶウォンダの姿に目を丸くするばかりで、もう一つの使命は忘れ去られていた。

ウォンダが汲んだ水は三つのシリンダー・ペンダントに分けられ、透明・紫・黄色に色分けされる。そのうち紫のシリンダーは、ターミナスに避難した妹ベリスに渡すよう、ウォンダはガールに頼む。

それから100年。銀河帝国にはセルダンの予測通り、随所に綻びが生じ、衰退の兆しが現れる。ファウンデーションは当初、トランターの銀河辞書編纂図書館設立財団という名目でひっそりとその役割を果たしていた。しかし、アナクレオン星区で独立運動が勃発すると、ターミナスは瞬く間に星区を制圧する。立役者はサルヴァー・ハーディンであった。

ハーディンの活躍により、ファウンデーションの勢力は強化され、トランター帝国と正面衝突するに至る。圧倒的な勝利の末、ファウンデーションは全銀河の主導権を握る。

その後、グレディアはハーディンの家からドーニック家に養子として迎えられる。彼女の卓越した能力はラヴェンダー農園にティーツリーを植えることで示され、衰退しつつある銀河の未来を託される。グレディアの娘アルカディア(後のミーターの主人とは別人)には、親交を絶やさなかった貿易商人ポエニッツが存在し、後にミーターの地球復興事業の基盤となる活躍を見せる。

さらにアルカディアとその娘アルシアは、ターミナスの過密人口を考慮してスミルノに移住する。そこで世話になったのは、馬の首暗黒星団付近のネフェロス星に由来する高貴な血筋を持つバイロン・ファレルであり、当時はサマーセック独裁政権に対抗する反政府運動に関わっていた。

第29話 銀河の恩人

アルシアは眉をひそめ、汚れた外壁と歪んだドアの間から覗く薄暗い居室を見つめた。「なにを偉そうに! あんたは誰よ。こんなボロ家に、誰が住めるっていうの?」

アルカディアは軽くため息をつき、アルシアの肩に手を置いた。「静かにして、アルシア。あなたも、かなりのおバカさんね。この方こそ、私たちの命の恩人なのよ。」

「命の恩人?!」アルシアの声は驚きに震えた。

「そうよ。」アルカディアは窓の外に広がる宇宙を指さした。「あの海賊船に襲われそうになった時、近づいてきた三つ星のマークと宇宙船。あのファウンデーション宇宙軍の船よ。コックピットで敬礼していたパイロット、見えなかった?」

アルシアは言葉を失った。アルカディアは微笑みながら続けた。「その時、直感したの。全部、ポニェッツさんの手配通りだったって。」

そのとき、居室の影から一人の青年が姿を現した。銀色の制服は控えめながら整っており、瞳は冷静さと確信に満ちていた。「おっしゃる通りです。僕は、あなたたちが来られるのをずっとお待ちしておりました。」

アルカディアは軽く頷く。「そう、やっぱり…」

青年、バイロンは胸元で拳を握り直し、静かに語り始めた。「僕はポニェッツさんの以前からのファンです。今回のことは、完全にポニェッツさんの仕組んだ筋書き通りです。ターミナスの船は彼から譲り受けたもので、擬装には一週間かけました。ポニェッツさんは今、別の星系を旅しているはずです。」

彼は深く息をつき、視線を遠くの星々に向けた。「今、スミルノの宇宙自衛軍を辞めて来たばかりです。僕はポニェッツさんから多くを学びました。…僕の先祖は、元々帝国の貴族で、馬の首星団の暗黒星雲近く、ネフェロス星の最高貴族だったという伝承があります。」

アルカディアは興味深げに耳を傾けた。

「ファウンデーションが来るまでは、このスミルナはセフ・サーマックの独裁政権下にありました。父は大牧場を経営していましたが、没収され、石炭鉱山に送られ、失意のうちに亡くなりました。」バイロンの声は低く、しかし決意に満ちていた。「僕の使命は、サーマックの残党を撲滅することです。明日から町に住みます。必要な時はいつでも呼んでください。すぐ駆けつけます。」

彼は一礼すると、背筋を伸ばして居室を後にした。

アルシアは母の顔を見上げ、眉をひそめた。「なんて生意気なやつ。お母さん、あんな男、信用していいの?」

アルカディアは微笑を浮かべ、目を細めた。「そんなことないと思うわ。彼って、ハンサムなだけじゃないの。しっかりしてる。惚れ惚れするくらいよ。アルシア、あなたのお婿さんにピッタリね。」

アルシアは顔を赤らめ、呆れたように母を見た。「お母さん、なに冗談言ってるの!」

宇宙の闇の向こう、星々が静かに瞬く中、バイロンの背中は未来への使命に向かって揺るぎなく伸びていた。

つづく。

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