第5話 嵐の気配
第四部 嵐の気配
『グレディア・ドーニックの日記』より
なぜターミナスは、銀河帝国の果て、アナクレオン太守管区のさらに外れに位置し、わずか十万人の移住者が送り込まれたのだろうか。
それは偶然ではなく、むしろ心理歴史学者たち、いや、セルダン自身の思惑だったに違いない。
百を超える島々から成り立ち、わずかに大きな島に首都モーヴを置く、海に覆われた星。資源も乏しく、暮らしは生存の瀬戸際に追いやられる。農業も換金性を持たず、帝国にとって価値などない。
だが、だからこそよかったのだ。帝国の目を欺きつつ、虎視眈々と目的へと這い上がるには最適の舞台。ハーディンはその状況を見事に活かした。たとえ本人がセルダンと会ったことはなくても、その意思を継ぎ取ったといえる。
彼のとった方法は、徹頭徹尾ガール・ドーニックの故郷シンナックスのやり方をなぞったものだった。シンナックスはさらに、人類の故郷の星の東方に浮かぶ小島ニフからの移民によって築かれた歴史を持つ。
この連鎖は偶然ではあるまい。
やがてアナクレオン星域が帝国から独立すると同時に、間髪入れずターミナスはその支配を掌握した。事態の迅速さには驚きを禁じ得ない。
しかし、油断はできない。混沌と無秩序、文明が退廃しつつあるこの銀河で、次にどのような敵が現れるのか。ファウンデーションがその脅威を克服できるのか、確証はない。母ドースの心配が杞憂であればよいが、第二ファウンデーションが表舞台に出るようなことは避けたい。
それでも、胸の奥に消えぬ予感がある。何かが始まりつつある―。
次話につづく . . .



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