第4話 時間霊廟
第四部 嵐の気配
ターミナスの空は重く、嵐の気配が街を覆っていた。市庁舎のホログラム室で、ドース・セルダンは微笑を浮かべながらハーディンを見つめていた。
「サルヴァー僕ちゃん、素晴らしかったわ」ドースは目を輝かせ、手を軽く叩いた。「あんなに辞書編纂委員会のメンバーが呆気にとられる光景、滅多に見られるものじゃないわ。もう実権は市長に移ったも同然ね」
ハーディンは少し困惑し、肩をすくめる。「僕ちゃんは止めて下さいよ . . . もう、時期ターミナスのナンバーワンなんですから」
ドースは微笑を崩さず、ゆっくりと話を続けた。「それにしても感激だったわ。ハリ・セルダンをホログラムで見られるなんて。曾祖父は写真でしか見たことなかったもの」
彼女の声にわずかな緊張が混じった。「でも、あなたに会いに来た理由は二つあるの」
ハーディンは軽く眉をひそめる。「理由 . . . ですか?」
「一つ目はね、ハリが言ってた『星界の涯』のこと。ファウンデーションナンバーツーっていうのよ。ご存知でした?」
ハーディンの表情が変わる。「『第二ファウンデーション』 . . . ?」
「そう。それが、今後大事な未来の出来事になるの」ドースは頷きながら、視線を遠くの窓の向こうに投げた。「でも、私は今の任務をただひたすら遂行するだけ。あなたのお母さんから学びました。そしてお父さんからも . . . 。30年後、本当の危機が訪れる。その時こそ、お母さんから学んだ兵法を試す時です」
ハーディンは静かに息をつき、言葉を選ぶように答えた。「このファウンデーションの行く末は、シンナックス方式 . . . 。敵を欺くには、まず味方から。ハリも同じ手を使いました」
「そこまでご存知でしたか」ドースは驚きの色を隠せない。「私の両親は、そんなにまでしてあなたを見込んでいたのね . . . 」
ドースは少し間を置き、視線をハーディンに向け直した。「二つ目の理由 . . . あなたのお子さんの二番目の女の子、グレディアちゃんを、私の養女に頂きたいの」
ハーディンの表情に柔らかな笑みが広がる。「喜んで。実は本人もそのつもりです。あなたのお申し出を心待ちにしておりました」
ドースの目が一瞬、大きく見開かれる。「えっ . . . そこまでご存知とは」
彼女の指先が、机の上に置かれた二色に輝くシリンダーに触れた。嵐の光が反射し、室内に小さな虹色の光が揺れた。
次の瞬間、時間はゆっくりと流れ、二人の決意と未来への約束が静かに空間を満たしていった。
次話へつづく . . .



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