10. 時間も感応できる!
―『ファウンデーションの夢』 第二部「ガイア」より
銀河暦12066年。
セルダンの裁判が始まる一年前。
ダニール・オリヴォーは、トランターにガール・ドーニックを呼び寄せるため、シンナックス星を訪れていた。そしてそのまま、ひとつの新たな構想を胸に、遠い人類の故郷―地球へと旅立つ。
地球はかつての栄光を失い、廃墟と化していた。だが、それでもなお、焼け爛れた大地の下には何かが残っていると彼は信じていた。
短時間だけ許された放射能シールドのもと、ダニールは地表の探索を終えた。廃墟となったカッシ市の上空、彼の船は静かに軌道を外れ、離脱態勢に入った。
艦内。
ダニールは副操縦席に座り、隣に立つ少年の姿を見た。少年――いや、すでに知性と感応能力を備えた存在、レオナルド。超高度な人工有機体。もはや彼は、ただの機械ではない。
「いわゆる最初の定住文明は、ハプロタイプDの種族から始まった。やがてキナ方面から多様な種族が流入し、それを受け入れたニフ人が列島の初の住人となる . . . 」
ダニールは記憶の断片を繋ぎながら、まるで遠い過去と未来を同時に語るかのように、言葉を紡いでいく。
「そして、わび・さびの文化が室町に結晶する。太田道灌と紅皿の逸話に象徴される精神だ。調和、美、そして静かな強さ . . . 」
そのときだった。
舷窓の向こう――かつて大海が広がっていたはずの北側の地平線から、一条の輝く光が彼の船に向かって飛んできた。眩い光は、まるで意思を持つかのように、彼の意識の中心に触れた。
「なんと . . . これですべての謎が解けた . . . 」
ダニールの声が漏れた。
「レオナルド、君に任務を与える」
「えっ?」とレオナルドが反応する。
ダニールは振り返り、柔らかく、しかし確信に満ちた声で言った。
「君はすでに、十分な感応力を持っている。君の名は“レオナルド”。それは、地球の誉れであり、希望の意味でもある。調和と美の模範。君が“ガイア”になるのだ」
「ガイア . . . ?」
「そうだ。君が創り出す星から、やがて“ベニ・サラ”という者が生まれる。彼女は『銀河の祝福』と呼ばれるようになるだろう。シンナックスとヘリコンから半々の人々を選び、まるで宇宙開拓時代から存在していたかのように巧みに導くのだ。知恵と感応、そして美と調和の星の誕生のために」
レオナルドの瞳が、青白く光る。「でも . . . なぜそんな先のことまでお分かりになるのですか?」
ダニールは静かに、そして微笑みながら言った。
「さっき、時間も感応できるようになった。」
10. 時間も感応できる!



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