- ドーニック屋敷の地下室
第六部 ベイタ
ファウンデーションの夢
ターミナスの冬は、かつての首都モーヴよりも冷たい風が吹く。
ロアは、夫シーウィーと共に、祖先ガール・ドーニックの農園を再び買い取り、住み始めていた。
娘ベイタはモーヴから頻繁に泊まりに来るが、そのたびに家の周囲に残る古い遺構を歩き回っては、祖先たちの痕跡を探していた。
近くには、朽ち果てたドーニックの屋敷があった。
石造りの壁は崩れ、地下へと続く階段は長い間封鎖されていた。
しかしその階段のさらに奥に、ロアは奇妙な気配を感じていた。
「セルダンだって、人間だ。予言者ぶってるだけじゃないのか?」
シーウィーは手にしていたカップを置き、ロアの顔をのぞき込んだ。
「シーウィー、確かにそうかもしれない。」
ロアは、窓辺に立ち、曇った空を見上げる。
「でもね、胸騒ぎがしたのよ。ハリ・セルダンっていう人は、人類全体を説明できると言っていた。でも、個人の能力までは把握できないと自分で言っていたでしょう? それって、ちょっと違うんじゃないかって思ったの。それに、私たちがここターミナスに戻って来られたのも、ただの偶然じゃないかもしれないのよ。」
「どう違うって思うんだい?」
シーウィーの声には、かすかな不安が混じっていた。
ロアは、声を落として囁いた。
「実はね、偶然見つけてしまったの。ドーニックが住んでいた家の地下室、そのまた下にもう一つの地下室があったの。そこに、床の下に隠された記録があったのよ。ガール・ドーニックが書いた百ページものノートだったわ。」
シーウィーは息をのんだ。
「なんて書いてあったんだ?」
ロアは、記憶の底から言葉を引き出すように目を閉じた。
「このノートを読めば、ハリは分かるはずだ。頼まれた調査、探索は無事完了した。明日、トランターから来るアルーリンに渡すだけだ。この記録をハリが読んでくれるのを祈るだけだ。彼の寿命が尽きるまでに。彼が予測した通り、五百年先には必ず、三万年続くはずの衰退、混沌、無秩序に光明を見いだせる。彼はわざと三百年後のセルダン危機にターミナスを欺いて、虚偽の報道を時間霊廟ですることになる。セルダン理論は不完全だったと思わせなければならないと。私としては、これもまた、我が子孫の奮闘に委ねるほかない。」
ロアは深く息をついた。
「だいたいこんな書き出しだったかしら。」
「ロア . . . 俺には何がなんだか、全然わからないんだけど。」
シーウィーは頭をかきむしった。
「もう三百年、経ってるんだよな . . . 。」
彼は立ち上がり、上着を羽織った。
「悪い、これからエブリング・ミスさんにヘイブン産のタバコを持って行くんだ。」
ロアはふと微笑んだ。
「ベイタも言ってたわよ。そんなお父さんが大好きだって。」
「そうかい . . . 。」
シーウィーは少し照れくさそうに笑い、ドアを開けた。
朽ちた屋敷の奥底には、まだ誰も知らない真実が眠っている。
その真実は、やがてベイタとミュールを巻き込む壮絶な物語へと続いていく――。
つづく。
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ページを開けば、まるでガール・ドーニックが残した手記を読み解く気分になれる
「地下室に眠る百ページの記録。あなたも未来へのメッセージを書き記してみませんか?」



