36. ドーニック屋敷の地下室

ベイタ・ダレル
  1. ドーニック屋敷の地下室

第六部 ベイタ 

ファウンデーションの夢

ターミナスの冬は、かつての首都モーヴよりも冷たい風が吹く。

ロアは、夫シーウィーと共に、祖先ガール・ドーニックの農園を再び買い取り、住み始めていた。

娘ベイタはモーヴから頻繁に泊まりに来るが、そのたびに家の周囲に残る古い遺構を歩き回っては、祖先たちの痕跡を探していた。

近くには、朽ち果てたドーニックの屋敷があった。

石造りの壁は崩れ、地下へと続く階段は長い間封鎖されていた。

しかしその階段のさらに奥に、ロアは奇妙な気配を感じていた。

「セルダンだって、人間だ。予言者ぶってるだけじゃないのか?」

シーウィーは手にしていたカップを置き、ロアの顔をのぞき込んだ。

「シーウィー、確かにそうかもしれない。」

ロアは、窓辺に立ち、曇った空を見上げる。

「でもね、胸騒ぎがしたのよ。ハリ・セルダンっていう人は、人類全体を説明できると言っていた。でも、個人の能力までは把握できないと自分で言っていたでしょう? それって、ちょっと違うんじゃないかって思ったの。それに、私たちがここターミナスに戻って来られたのも、ただの偶然じゃないかもしれないのよ。」

「どう違うって思うんだい?」

シーウィーの声には、かすかな不安が混じっていた。

ロアは、声を落として囁いた。

「実はね、偶然見つけてしまったの。ドーニックが住んでいた家の地下室、そのまた下にもう一つの地下室があったの。そこに、床の下に隠された記録があったのよ。ガール・ドーニックが書いた百ページものノートだったわ。」

シーウィーは息をのんだ。

「なんて書いてあったんだ?」

ロアは、記憶の底から言葉を引き出すように目を閉じた。

「このノートを読めば、ハリは分かるはずだ。頼まれた調査、探索は無事完了した。明日、トランターから来るアルーリンに渡すだけだ。この記録をハリが読んでくれるのを祈るだけだ。彼の寿命が尽きるまでに。彼が予測した通り、五百年先には必ず、三万年続くはずの衰退、混沌、無秩序に光明を見いだせる。彼はわざと三百年後のセルダン危機にターミナスを欺いて、虚偽の報道を時間霊廟ですることになる。セルダン理論は不完全だったと思わせなければならないと。私としては、これもまた、我が子孫の奮闘に委ねるほかない。」

ロアは深く息をついた。

「だいたいこんな書き出しだったかしら。」

「ロア . . . 俺には何がなんだか、全然わからないんだけど。」

シーウィーは頭をかきむしった。

「もう三百年、経ってるんだよな . . . 。」

彼は立ち上がり、上着を羽織った。

「悪い、これからエブリング・ミスさんにヘイブン産のタバコを持って行くんだ。」

ロアはふと微笑んだ。

「ベイタも言ってたわよ。そんなお父さんが大好きだって。」

「そうかい . . . 。」

シーウィーは少し照れくさそうに笑い、ドアを開けた。

朽ちた屋敷の奥底には、まだ誰も知らない真実が眠っている。

その真実は、やがてベイタとミュールを巻き込む壮絶な物語へと続いていく――。

つづく。

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