「琥珀の誓い ― 銀河再生の女系譜」
グレディアからアルカディアへ、そしてアルシアへ
「ファウンデーションの夢」シリーズ、第五部『Tea Tree』のあとがき
Yin Yi
「夕暮れの栗毛」、あるいは「琥珀の誓い」とも讃えられたアルシアの髪の色は、母アルカディアの祈りの結晶であった。穏やかな力による銀河の癒しと再生を願い、彼女は古き伝承に由来する名――アルシア(Althea)を娘に与えた。その名はやがて、銀河史における新たな復興の兆しを投げかける光となったのである。
それは、サルヴァー・ハーディンの娘グレディアが目の当たりにした崩壊の時代に呼応するものであった。既存の秩序は音を立てて崩れ、混沌が広がり、人類文明は衰亡へと傾きつつあった。だからこそ、次なる時代には「植物的存在」の力――静かに、しかし確実に生命を支える根源的な意味が求められることを、彼女は深く悟っていたのである。
母グレディアの精神を胸に抱いたアルカディアは、ある独立貿易商の奇妙な体験を通じて、不思議な啓示に触れることとなる。リマー・ポニェッツ――彼の輸送船は偶然にも通常の航路を外れ、ブラックホールの闇に呑まれかけた。そのとき、不可解な力によって船は引き戻され、彼が積み込んでいたラヴェンダーの精油は、衝撃により変質した。調査の結果、それは人間の生命に計り知れぬ恩恵をもたらす万能薬へと転じていたのである。この奇跡を知ったポニェッツは、以後終生にわたりアルカディア家との縁を絶やさなかった。
アルカディアの知恵はさらに広がり、ティー・ツリーの栽培とその効能へと注がれてゆく。ラヴェンダーとティー・ツリー――二つの植物の力は銀河全土の人類にとって欠くことのできぬ至宝となった。
その遺志を継いだ娘アルシアは、アグロフォレストリーを推し進め、母の夢をさらに発展させた。彼女にとって母アルカディアは尊敬の極みであり、自らの娘にも同じ名を授けたほどであった。
夫バイロン・ファレルは、惑星スミルノの古代寺院に眠る書物を発見する。その著者はジョン・ナックと推測され、古代地球文明から宇宙文明へ移行する臨界点を描いた『歴史思想書』であった。彼がその研究に没頭する一方、アルシアは娘アルカディアのもとに現れた一冊の書物を見出す。それは「断捨離」と裏書きされた『児童のための知識の書』であった。
この二つの発見は、やがてベイタ・ダレルへと受け継がれ、さらに彼女の孫アルカディアの手によって結晶化し、銀河再生への道標として確固たる地盤を築くのであった。
完
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