見習い候補生の試面接験

アルカディア・ダレル

見習い候補生の試面接験

galaxy20,000yearslaterseries
第1弾
ファウンデーションの夢

第七部 
アルカディア・ダレル 

第1話
エピソード 47
Date:ファウンデーション暦376年
Place:第2ファウンデーションの一室

見習い候補生の面接試験

あらすじ

ジータ・マロウの娘ロアには、極めて聡明な娘ベイタがいた。

ベイタとミュールの壮絶なる物語は、ファウンデーション設立から300年後に起こる。ベイタの物語はこうして始まる。

ベイタの両親がガール・ドーニックの農園を再び買い取り、住み始めた。ベイタもモーヴ(ターミナスの首都)に住んでいたのでしばしば泊まりに来ていた。

時代は、ターミナスも徐々に往時の精彩を欠いて来たインドバーの世襲政権のもと、時代の暗雲に気付いていた数名の人々がいた。
一人は心理学者、エブリング・ミス。もう一人は貿易商人のランデュ・ダレル、そしてベイタ・マロウもその一人に加えなければいけない。
 
ベイタ・マロウはトラン・ダレルと結婚し、トランの出身星ヘイブンに赴く。そこで、トランの叔父のランデュに新婚旅行にカルガン行きを勧められる。ハネムーンは数日で今後の銀河を揺り動かす大事件に移行する。

ミュールの宮殿から道化師がハネムーン中の両人に助けを求めて来た。

その道化師はボボと名乗った。彼らは早々宇宙船の格納庫に戻る。

そこに第三者がまた登場する。
二重スパイ!?

そのハン・プリッチャー大尉は、すでにミュール(ボボ)によって、洗脳されていた。

さらにミュールはトラン・ベイタの宇宙船でターミナスまで同乗し、モーヴ市に降り立ち、ファウンデーション軍の宇宙戦艦軍に喪失感を与え、ハリ・セルダンの出現する時間霊廟に集う人々を降伏感へ誘導し、一日に、完全占領してしまった。

最後の救いの砦であったファウンデーションの遊軍、独立貿易商人協議会連合の星々も、戦意を喪失。ミュールの圧倒的な感応力の前ではなすすべもなかった。ヘイブンに一時避難したベイタ夫婦とボボとエブリング・ミスは、トランターに赴くことになった。ランデュはボボの存在に何かを察するようになったが、ランデュは残った。

トランターでは、旧ストーリーリング大学付近の自称コンポレロン人たちの農村共同体が300年祭の催し物の準備で忙しくしていた。そこの村長、リー・センターは彼ら4人を丁重に向かい入れてくれた。

彼ら4人を、トランターの農村指導者家族は丁重に、ファウンデーション300年祭の晩餐会に、趣向を凝らして招き入れた。その席には同じくネオトランターから来ていた(?)、一応議会議長と言う立場の、ヴェナ・ビリ女史がいた。

エブリング・ミスはボボと一緒にストーリーリング大学の一室に籠って、当のミス博士は食事も絶って一心不乱に調べものに没頭していた。
 
事件が突然起きたのは、そんなやさきだった。エブリング・ミスは、何かを発見して、訪ねて来たベイタに口を開こうとした瞬間のことだった。

ヴェナ・ビリ女史も程なく息を引き取る(停止する)。

そのエブリング・ミスとボボがいた場所が、300年前のハリ・セルダンの心理歴史学の研究室であったことがわかるのは、ベイタ・ダレルの孫アルカディアがトランターを訪れてからのことであるのだが。

本文

ペレアス・アンソーアは緊張した面持ちで、薄暗い部屋に足を踏み入れた。壁には数千年の歴史を思わせるタペストリーがかかり、中央にはナロビ長老が座っている。その姿は飾らないにもかかわらず、彼が発する存在感が部屋を満たしていた。彼は第二ファウンデーションの第一発言者でもある。

「見習い候補生、ペレアス・アンソーア。君を呼んだのには訳がある。」

ナロビ長老は穏やかだが深みのある声で語りかけた。アンソーアはその言葉にわずかに身を引き締めた。

「君にはもうそろそろ見習いから卒業してもらいたい。そして現場に赴く前の最後の口頭試問を行う。もっとも、試問といってもほとんどは私が喋ることになるだろうがね。」

「ええ、結構です。よく感応できています。ナロビ長老――いえ、第一発言者。」アンソーアは姿勢を正し、答えた。

ナロビ長老の目が微かに細まり、深い満足感を表した。彼はさらに言葉を紡ぎ始めた。

「まず、五十年前に第二ファウンデーションがミュールを誘き寄せるのに成功した出来事についてだ。そのとき、辛うじてトランターの存在を秘密にできた。我々の捨て身の戦法が功を奏したが、その第一の要因は何だったか、君の考えを聞かせてくれ。」

アンソーアは間を置かず答えた。「それはミュールの自尊心を利用できたことです。一度ターミナスを征服したことで、次は残る第二ファウンデーションのみだと彼が過信し、焦りすぎた。その心理を逆手に取ったからだと思います。」

「その通りだ。」ナロビ長老は静かにうなずいた。「さらに、彼にプリッチャーを通してダゼンダ―the end of stars―が本当の第二ファウンデーションだと思わせた。ミュールがダゼンダを征服する前に、我々はダゼンダ人をコントロールして、ミュールのいないカルガン星系を支配下に置いたのだ。そして、彼の帰る場所をなくした。」

「ミュールをカルガンから孤立させ、ロッセムに誘導したのですね。」アンソーアが言葉を引き継ぐと、長老は微かに笑みを浮かべた。

「そうだ。すべては彼の自信を徹底的に挫くためだった。そして、彼の寿命とともに彼の全銀河支配の野望も費失せた。」

アンソーアは深く息を吸い込み、その見事な策略に感嘆を覚えながらも、新たな問いを待った。だが、ナロビ長老の顔には一抹の暗い影が宿っていた。

「ところが、それが次の大問題を引き寄せてしまった。セルダンでも読めなかった事態が発生したのだよ。新たなセルダン危機が到来した。」

「新たな危機 . . . ですか?」アンソーアの声にはわずかな驚きが含まれていた。

ナロビ長老はゆっくりと頷き、椅子に深く座り直した。「第一ファウンデーションが復活するに至り、彼らは第二ファウンデーションを快く思わなくなった。次の銀河で覇を唱えるのは第一ファウンデーションのみだという思惑が生まれ、我々への警戒心が強まっている。両者は飽くまで補完関係であり続けなければならないのだが!」

その言葉に込められた緊張感が、アンソーアの胸を打った。

「そこで、君だ。」ナロビ長老の視線がアンソーアを射抜いた。「ターミナスに潜入し、第一ファウンデーションとの調和を取り戻すための鍵を探ってほしい。」

アンソーアは深く頭を下げた。「ご期待に応えられるよう全力を尽くします。」

部屋には静寂が訪れた。その沈黙の中で、アンソーアは自分が銀河の運命を握る一端を担うことになるのだと痛感した。そして、それがどれほど困難で危険なものであるかも。

次話につづく . . .

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