18. クローヴァー

ウォンダとガールの地球探訪

第8話 クローヴァー

ファウンデーションの夢 第三部 ウォンダとガールの地球探訪

任務は無事に完了した。
放射能防御フードと宇宙服を取り巻くシールドのカーテンに守られながら、ウォンダとガールは荒涼とした地球の大地を踏みしめていた。

見渡す限り灰色の大地。廃墟のような地平線。だが、その景色を前にしても、ガールはただ朧げに立ち尽くし、目の前を駆け回るウォンダを呆然と見守るだけだった。もうひとつ課せられていた使命など、彼の心からは消えていたのかもしれない。

ウォンダが歓声をあげたのは、突然だった。地面の裂け目から湧き出す清水を見つけたのだ。彼女は子供のように夢中で水を汲み上げる。その周囲には、なぜか一面にクローヴァーが群生していた。放射能に覆われた世界のただ一角、奇跡のような緑の島。

――再生の命。
ガールの胸に、その言葉が浮かんだ。

その時、彼の記憶にかすかな響きが甦る。古文書の一節。

「そして私の結論はこうだ。あなたがたは、おそらく理解しないであろう。だが、あなたがた一人一人が地球なのだ。自浄作用をもち、新しい命を生み出すことができる。七の七十倍、人を赦せ。これは寛容が無限であることを教え、命が永遠であることを示しているのだ。」
 ──『ジョン・ナックの歴史思想書』

ウォンダは振り返り、透きとおる水を両手ですくい上げながら微笑んだ。

「よく協力してくださいました、クレジットバッグさん。それにしても驚いたわ! この星全体が放射能に満ちているのに、この泉だけは汚染されていなかった。島全体を覆っていたクローヴァーも、まるで護りのようだったわ。」

彼女は水筒に泉の水を慎重に分け入れながら、静かに続ける。

「この水を運んで行くの。
一つはトランターへ。
二つめは、ヒューミンさんのお仲間がいる星へ。
三つめは、あなたに頼みたいの。ターミナス──おじいちゃんの仲間が移住する星へ。
あっ、そうそう、四つ葉のクローヴァーも見つけたのよ!」

彼女は小さな緑の葉を掲げ、嬉しそうに笑った。

「ねえ、気づいたの。このクローヴァーの意味に。三つの葉はそれぞれ別々の象徴だけれど、本当はひとつに結びついている。人間も同じ。みんな独立して自尊心を持っているけど、結局は共に生きてこそ幸せなんじゃないかって。」

 ウォンダは少し照れたように肩をすくめた。

「 . . . 単なる勘繰りかしら!」

 ガールは答えなかった。ただ、彼女の手に握られた四つ葉のクローヴァーを見つめながら、失われたはずの地球にまだ「再生」の兆しがあることを信じようとしていた。

――次話につづく。

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