第2話 聞かずんばこれを去らん
ファウンデーションの夢
第三部 ウォンダとガールの地球探訪
第2話 聴かずんばこれを去らん
エピソード12
ガール・ドーニックは暗い留置所の中で頭を抱えていた。トランターに到着した途端に逮捕され、今や自分の未来すら見通せない状況に追い込まれている。「なぜこんなことに?」と自問しながらも、冷たい床の感触が現実を嫌でも思い出させた。
そのとき、重厚な鉄の扉が音を立てて開いた。一人の男が姿を現した。端正な顔立ちに鋭い眼光。彼は静かに近づき、ガールに向かって語りかけた。
「ガール・ドーニック君だね。私はロース・アヴァキャム。ハリ・セルダン博士から君の代理人として指名された。」
ガールは立ち上がり、苛立ちを隠せない様子で答えた。
「わたしは不法にもここトランターに来た途端に拘束されたんだ。皇帝に直訴の手続きを希望する!こんな状態のためにここに来たのではない。もういいから、あなたの手でなんとかして故郷のシンナックスに帰らせてくれ!」
アヴァキャムは眉を寄せたが、冷静に返した。
「君には大変迷惑をかけているのは承知しているが、これが最上の策なんだ。セルダン博士はこの日を長い年月待っていた。そして、今日こそが心理歴史学の完成を迎える日だ。」
アヴァキャムは話を続ける。
「18年前、ユーゴ・アマリルとセルダン博士は心理歴史学を作り上げるため、リンジ・チェンを徹底的に研究した。チェン家の行動パターン、彼らの祖先が用いた兵法。その全てを解析し尽くした。そして、それに基づいてファウンデーション計画を立てた。」
ガールは驚きを隠せないまま問い返した。
「チェン家の行動パターンがどうして重要なんですか?それに、セルダン博士はどうやってチェンに対抗するつもりなんですか?」
アヴァキャムは少し微笑んでから答えた。
「チェンはセルダン博士の影響力を恐れている。博士のグループを銀河の果ての星に追放するように仕組むことで、自らの権力を維持しようとしているんだ。しかし、セルダン博士はその追放を利用し、銀河百科辞典編纂財団、そして『第1ファウンデーション』を設立する計画を立てた。」
ガールは衝撃を受けた表情で、言葉を紡いだ。
「第1ファウンデーション . . . ?それは一体何のためのものなんですか?」
アヴァキャムは真剣な顔つきで説明を続けた。
「銀河帝国が滅亡した後に、混乱の時代を限りなく短くするためだ。そして君は、その計画の中心人物の一人となる。ガール・ドーニック、君は『銀河百科辞典編纂財団』の51人目の数学者であり、統括責任者に選ばれている。」
ガールは息を呑んだ。
「そんな . . . 。どうして僕が?」
アヴァキャムは静かに答えた。
「君の才能と可能性が必要だからだ。そして、この計画が成功すれば、君の名前は銀河の歴史に刻まれることになる。」
ガールの心には、困惑と期待が入り混じった感情が渦巻いていた。この瞬間から、彼の人生は再び大きな転機を迎えようとしていた。
次話につづく . . .
Yi Yin が今回の登場人物、謎のロース・アヴァキャムについて述べた論考をフェイスブックグループ「ファウンデーションの夢」に載せておりますので、深読みされたい方はどうぞお触れください。
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