- 束の間バカンス
ファウンデーションの夢
第六部 ベイタ・ダレル
第7話 束の間のバカンス
エピソード 40
アーシェルという伴星の空いっぱい広がる惑星カルガン。その静謐な美しさに、ベイタ・ダレルは心を奪われていた。彼女の隣で夫のトラン・ダレルは、海から聞こえる波音に耳を傾け、目の前の浜辺を眺めて満足げに微笑んでいた。
「さあ、浜辺だ。叔父さんが言ってた通りだね、最高じゃないか!」トランが足元の砂を掬いながら言った。「波の音、たまらないな。でも、ターミナスの海辺もよかったよな。ベリス岬、覚えてるかい?」
ベイタは微笑みながら肩をすくめた。「トランったら!そんな懐かしい話をするなんて。ミュールのことなんて、もうすっかり忘れてるんだから。」
そのとき、彼女の目に奇妙な光景が飛び込んできた。「ねえ、見て、トラン。あっちから誰か来るわ!逆立ちして逃げてるみたい . . . 道化師よ!」
遠くから、カラフルな衣装をまとった男が必死に走ってくる。逆立ちから普通の走りに切り替えたところで、彼は二人のすぐそばにたどり着き、息を切らしながら叫んだ。
「助けてくれますか!追われているんです。海辺の警備隊に!」
彼は一息つくと、二人をじっと見つめた。「お二人は . . . ターミナスからのカップルですよね?ようこそカルガンへ。」
ベイタは彼を疑わしげに見た。「何か悪いことでもしたんでしょう?」
道化師は帽子を取って深々とお辞儀をした。「その通りです、奥様。私はミュールの宮殿から逃げてきました。名前はボボ・マグニフィコ・ギガンティクス。どうか、ボボとお呼びください。」
「ミュールの宮殿から?」ベイタは驚いてトランの顔を見た。
「ベイタ、どうする?」トランは彼女に尋ねる。
ベイタは呆れたようにため息をついた。「義を見てせざるは勇なきなり、って言いたいんでしょう?」
トランはにやりと笑った。「その通りだよ。彼を見捨てるなんてできない。」
ベイタは肩をすくめながら言った。「分かったわよ。せっかくこれからバカンスだっていうのに . . . じゃあ、格納庫に戻って船を準備しましょうか。」
しかし、ボボの次の言葉が、二人の動きを止めた。
「ええと、奥様、今何と言いました?船ですか?それはありがたいのですが…あ、そうだ、伝えておきます。私が逃げてきたのは、ミュールの宮殿からです。」
ベイタはその言葉に目を丸くした。「ミュールの宮殿ですって!?」
トランは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに冷静さを取り戻した。「どうやら、ただのバカンスじゃ済みそうにないな。」
ベイタは額に手をやりながら、目の前の道化師を見つめた。「トラン、本当に引き受けるの?」
「もちろんさ。」トランは毅然と頷いた。「僕らの冒険は、今始まったばかりだ。」
次話につづく . . .
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