第75話銀河の穿ち口
第75話 銀河の穿ち口
SF小説 ボー・アルーリン
コンポレロンの宙航基地は、銀河系の中でも屈指の規模を誇る。無数の宙航船が整然と停泊し、乗員や技術者が忙しく行き交う。広大なドックの一角で、ホルク・ミューラーは目の前の男性に向かって姿勢を正した。
「ベントレー・ランビット先生、初めてお目にかかります。私、ホルク・ミューラーと申します。」
ランビットはシンナックス出身の学者で、穏やかな物腰が特徴だった。彼は軽く会釈をし、微笑みながら言葉を返した。「ホルクさん、お噂はかねがね伺っていますよ。ボー・アルーリン教授の教え子でしたね。」
「はい、長年お世話になっております。」ホルクは謙遜しつつ、一瞬躊躇してから続けた。「突然のお願いで恐縮ですが、ランビット先生のいとこのガール・ドーニック博士にお会いできないでしょうか?」
ランビットは一瞬驚いたようだった。「ガールに?彼の名前が出るとは意外ですね。何かご用ですか?」
「はい、博士のカオス理論や証古学に関する研究について伺いたいのです。教授からその内容を聞き、銀河復興の鍵となる可能性を感じています。」
ランビットは興味深げに眉を上げた。「銀河復興ですか。それは壮大なテーマですね。ガールもきっと興味を持つでしょう。彼に連絡を取ってみます。」
数日後、ホルクは緊張を抑えつつ、ガール・ドーニックの研究室を訪れた。古代の星図や複雑な数式が描かれたホログラムが漂う室内で、丸顔で童顔のガールが出迎えた。
「ホルクさんですね。いとこのランビットから話は聞いています。」
「お時間を割いていただきありがとうございます。」ホルクは礼を言い、席に着くよう促されると、深く頭を下げた。
「博士の研究が、私たちの進めるプロジェクトの未来にとって重要だと考えています。」
ガールの表情がやや引き締まる。「銀河復興、ですか。それはあの偉大なハリ・セルダン教授が『第1の基盤』で担うべきものでしょう。私はただの田舎学者に過ぎません。」
「いえ、ドーニック博士。」ホルクは真剣な目でガールを見つめた。「博士の知識と洞察が、未来を切り拓く力になると信じています。特に、故郷星『アタカナ』に繋がる鍵を見つけるには、博士のご協力が不可欠です。」
ガールは驚いた表情を浮かべたが、すぐに冷静さを取り戻した。「アタカナ、ですか。確かにそれは私の研究の一部で言及していますが、私は冒険に出る性分ではありません。それに . . . お断りします。」
ホルクはすかさず切り返した。「では、お尋ねします。『紫外線効果とニフ文明』についての博士の説は、空理空論でデタラメだとおっしゃるのですか?」
ガールは動揺を見せなかったが、目の奥で微かな興味の火が灯ったように見えた。
「続いてお伺いします。銀河復興の鍵は、アタカナと銀河の内外を結ぶ『穿ち口』にあるとされる説も否定されるのですか?」
ガールはしばらく沈黙した後、静かに息をついた。「なるほど。どこでそれを知ったのかは聞きませんが、確かにアタカナが銀河復興の象徴になる可能性を考えたことはあります。その発想自体は興味深い。」
彼はホルクをまっすぐ見つめた。「お話を聞かせていただきましょう。ただし、私の協力を得られるかどうかは内容次第です。」
ホルクは深く頷き、心の中で拳を握りしめた。この一歩が、銀河復興の未来を切り拓く道となるかもしれない。
次話につづく . . .
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