
第1話 導入
SF小説『ボー・アルーリン』
第一部 導入 「アイザック・アシモフの小説からの写し」1
「ハリ・セルタンが自分の研究室に入ると、ウォンダとパルヴァーがすでに来ていて、部屋の端の会議用テーブルのところに坐っていた。この二人の場合にはいつもそうであるように、室内は完全に静まりかえっていた。
それからセルダンは、もう一人の見慣れない男がかれらと一緒に坐っ ているのに気づいて、はっと足を止めた。おかしいぞ―ウォンダとパルヴァーは他人と一緒の場合には礼儀上、正常の会話に戻るのがつねだった。だが今は、三人のうちだれも口をきいていなかった。
セルダンはその知らない人物を観察した——奇妙な風貌の男、三十五歳ぐらいで、あまりにも長い間学問に没頭していたために、近眼になってしまったような顔をしている。顎のあたりに、一種の毅然とした雰囲気が漂っていなければ、こいつは無能力者 かもしれないとセルダンは思った。だが、それは明らかに間違いだった。その男の顔には強さと優しさがあった。信頼できる顔だ、とセルダンは結論した。
「おじいさん」ウォンダは優雅に椅子から立ち上がっていった。孫娘を見て セルダンの胸が痛んだ。彼女は家族を失って以来、この数ヵ月間でひどく変わってしまった。いつもかれを“おじいちゃん”と呼んでいたのに、今はもっと他人行儀の“おじいさん”である。前には、にこにこ笑いや、くすくす笑いをほとんど抑えることができな いように見えたのに、最近では、彼女の落ち着いた視線が、至福を与える微笑によって明るく輝くのは、ほんのたまにしかない。しかし―今はいつものように―彼女は美しい。そして、その美しさに優るものは、彼女の驚嘆すべき知力だけである。」
アイザック・アシモフ『ファウンデーションの誕生』下327ページを僭越ながらまるまる写させてもらいました。
To be continued…
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