宇宙の基礎公理

ボー・アルーリン

第77話宇宙の基礎公理

第77話 宇宙の基礎公理
SF小説 ボー・アルーリン

エア・タクシーはニュートーキョー市に向かい、流れる雲を横目に、高度を保ちながら静かに進んでいた。キャビン内では、ボー・アルーリン、イリーナ・シャンデス、そしてミューラー・ホルクがそれぞれの考えを語り合っていた。

「先生、しばらくご無沙汰いたしました。イリーナさんも。」ホルクが控えめに挨拶をする。

ボーは微笑んだ。「ホルク、聞いているぞ。君が銀河半球を越えてここまでやってきた理由をな。」

「理由 . . . ?」

「君の『宇宙潮流理論』だ。短い公式だが、実に見事だ。我々の二つのプロジェクトにとって、あれは間違いなく基礎公理になる。」

ホルクは少し驚いた表情を浮かべた。「そう言っていただけるのは光栄です。しかし、その理論はハリ・セルダンに採用されませんでした。」

ボーの表情が柔らかくなった。「それが良かったのだよ。」

「どういう意味でしょうか?」

「まず一つ目、その理論は極めて斬新だった。しかし、ハリはその価値を見抜けなかった。二つ目、サハ・ローウィンス嬢という逸材の能力を確信する試練となった。そして、三つ目は . . . まだ教えるには早いな。」

ホルクは眉をひそめた。「三つ目とは?」

「タイミングというものがある。」ボーは言葉を切り、窓の外の風景に目を向けた。

イリーナが口を挟む。「ホルク、サハ・ローウィンス嬢のこと、あなた気になっていたでしょう?」

「えっ . . . ?」ホルクは動揺した表情を隠そうとした。「いえ、彼女の美貌ではなく、彼女の才能に感銘を受けたんです。彼女はトランターからのアカデミーの特別調査隊員として派遣されて、惑星コンポレロン周辺星系の資源分布と社会構造の関係を調査していました。彼女には何か特別なものを感じました。」

「素直でよろしい。」イリーナは微笑んだ。「ボー先生も彼女を50人会のメンバーに推薦していたのよ。」

ボーが頷く。「そうだ。その一環として、彼女に君の理論をハリに提出させた。それが彼女の能力を証明する試金石になったわけだ。」

ホルクは納得した様子で頷いた。「それでは、その理論が採用されなかったのも、結果的に良かったということですね。」

「まさにその通り。」ボーは確信に満ちた声で答えた。

ホルクは話題を変えるように言った。「今回の訪問は、ベントレー・ランビットさんとの再会が目的なのですね?」

「そうだ。必ず帰ると約束した。惑星サンタンニでの仕事は完全な成功ではなかったが、多くの収穫を得た。まずここにいる2人を私自ら紹介したい。その収穫物を彼に報告する必要がある。彼は商人なので実利的だからね。」
「ボー、それって私も収穫物のひとつなのね?」
「いいや、ごめんごめん。彼にはあのクルーソー氏の代わりに私の報告を受けてもらいたいと思っている。それから、彼は私にどうしても見せたい場所があると言っていたからな。それに、ホルクには引き続き、惑星シンナックスへの航路を開いておいて欲しい。」

「そう来ると思っていました、先生!」

3人の会話は和やかな時を輝かせて、エア・タクシーはニュートーキョー市の中央ビル群に近づき始めた。遠くの地平線には無数の都市灯が輝き、未来を予感させる光景が広がっていた。

次話につづく . . .

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