第4話 動かぬものこそ歴史を変える
SF小説 ボー・アルーリン
「ガールの盟友ボー・アルーリンは、トランターの仲間との紐帯を強く守り続け、大いにガールを助け、ガール亡き後は、ガール家を支え続けていた。
方や、アルーリンは、ターミナスの次の段階への準備を着実に進めていった。
以前、ウォンダ・セルダン(パルヴァー)と親しかったというボー・アルーリン(心理歴史学者)が、彼は、トランターとターミナスとの間を行き来していたが、そのときはトランターに長く滞在していて、わざわざトランターから私に会いに来たことがあった。ウォンダは死期が迫っていて、私に逢いたいと。(ファウンデーション暦42年)」『ドース・ドーニックの手記』」
当然、ファウンデーション暦40年に亡くなる寸前まで理事会の椅子は6つであった。理事会参与として、その6番目の椅子は、ガール・ドーニックが座っていた。
そのガールの亡きあと、その6番目の席はボー・アルーリンが占めてはいたが、ほとんど彼は、その席に座るということはしなかった。
アルーリンは、当初から理事会が開かれるという知らせを受けた時には自宅を留守にしているか、仮に理事会の事務がアルーリンに連絡を取りたくとも、大概、惑星ターミナスからは離れていたし、彼の家族は、ターミナスどころか母星、トランターにも住んでいない、という有り様だった。
サルヴァー・ハーディーン市長が座った椅子というのは、そういういわくつきの席であったし、若き5人の理事たちとは、日常、顔を逢わせることはなかった。
とくにこの5人のうちジョード・ファラは、アルーリンの存在には並々ならぬ興味、しいていうなら執着めいた感情を抱いてはいたが、残念ながら、ボー・アルーリンのことについては、アルーリンの心理歴史学教室の学生数名からしか間接的にしか情報を得ることがなかった。それもその生徒は全員、中途でその教室から去っていたというし、ボー・アルーリン個人の人となりについては知らないというだけであった。
あるいはそのように口裏合わせをしていた、というのか?
たまにファラの脳裏に、なぜ、アルーリン師に接触できないのであろうか、とういう感覚がよぎったことはあったのだが。
いまだに謎多き人物、ボー・アルーリン、その人であった。
ジョード・ファラは、そのことについて、サルヴァー・ハーディンにある嫉妬めいた感情をもっていたのであろう。後には、惑星ターミナスの実権が「帝国辞書編纂財団理事会」から「ターミナス惑星議会」すなわちモーヴ市議会、そしてゆくゆくは市長に移って行くのが必然的であるという諦観をもつようになってもいた。
次話につづく . . .
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