第81話具現
第81話 具現
SF小説 ボー・アルーリン
Date:銀河暦12,066年
Place:惑星ターミナス
惑星ターミナス、銀河帝国の首都。その壮麗な広場に、ダニール・オリヴォーはひとり立っていた。ファウンデーション設立のために進めてきた計画が、いよいよ佳境を迎えようとしている。彼の脳裏には、精神感応力を基盤とした新たな社会モデルが鮮やかに描かれていた。しかし、同時に疑念が彼の心を覆っていた。
「本当にこれが正しい道なのだろうか?」
ダニールは自問する。ガールの理論が示した「銀河縁」における人類再生。その場所が文明再興の拠点となる可能性は十分にある。しかし、確信には至らない。
その時、惑星イオスからはるばるフィオーナによって呼び寄せられたロボット・プロキュラスの通信デバイスが振動した。発信者はフィオーナ。彼女は今回の行動が最重要だとの確信から遥か惑星イオスから、特別な伝言を託してきた。ダニールはそのメッセージを再生する。
「ダニール、あなたの計画は壮大ですが、それを成功させるために私たちが見落としている何かがあるように思えます。ウォンダが得たデータを改めて解析すれば、新たなヒントが見つかるかもしれません。」
フィオーナの言葉に、ダニールの中で新たな可能性が浮かび上がった。
「銀河縁 . . . 」
彼は呟いた。その場所には、未知の鍵が隠されているのだろうか?
さらにダニールは、計画に重要な役割を果たしてきたボー・アルーリンの名を思い出した。彼の成長は目覚ましく、今や銀河文明復興に向けた不可欠な存在となっている。ウォンダにはもちろんボーの影。
「ボーは素晴らしい才能を持つ人物だ。次に会う時、彼がどのように成長しているか楽しみだな。かつての『三つの願い』が、銀河復興の未来までも導くとは驚きだ。」
突然、通信デバイスから再びフィオーナの声が響いた。
「ダニール、あなたが過去に果たしてきた役割を振り返る時が来ました。宇宙霊が導く答えは、人類の故郷に戻ることかもしれません。惑星シンナックス、あるいはハリ・セルダンの故郷ヘリコンを訪れてください。心理歴史学の限界を見極めるためにも、件(くだん)の若き学者を招いて次代を担わせるのです。そして、ボー・アルーリンのグループと共に、新たな道を切り開くのです。」
フィオーナの言葉は重く響き、ダニールの決意を固めた。
「シンナックス . . . ヘリコン . . . そして銀河の反対極か。」
彼は目を閉じ、次なる行動を思い描いた。そしてその先には、人類文明の未来が広がっているに違いないと信じていた。
次話につづく…
コメント