第79話偏愛の影
第79話 偏愛の影
SF小説 ボー・アルーリン
Date:銀河暦12,064年
Place:惑星トランター、エリー地区
惑星トランター、エリー地区。古びた図書館の一角で、フィオーナは黙々とハリ・セルダンの設立した第1ファウンデーションの文書を眺めていた。彼女の瞳はその内容に集中していたが、心の中では別の思考が渦巻いていた。もちろん、元愛夫ハリ・セルダンの文書ではあったが、その背後には確実に首領ダニールの意図を読み取っていた。
「ダニール . . . あなたの構想は素晴らしい。でも、どこかが間違っている、どこかが壊れている。ロボット第零法則の限界か、またはその瑕疵に触れたのかもしれないわ。」
彼女はかつて、惑星シンナから惑星コンポレロンの途中で舷窓から感じ取った「ダークマター」の存在を思い出していた。かの感覚ー「もちろん人間には視えないが、陽電子頭脳を有するロボット第零の法則のグループには、それが感じられる。いや、その能力は、女性ロボットである『わたし』だけかな?」、と。
フィオーナは息を深く吸い込み、視線を窓の外に向けた。彼女の心には、ダニールの人類福祉構想への信念と、その背後に潜む不安が交錯していた。ダニールの数多の文芸復興への執念は果たして最終的に報われるのであろうか?
その時、フィオーナの心を占めているのはダニールの理想を支えるための努力だけではなかった。
セルダン一家への強い偏愛が彼女の行動に影響を与えていることも、彼女自身が意識していた。特に、レイチとベリスに対しては溺愛に近い感情を抱いていたが、マネルラとウォンダに対しては距離を感じていた。
ウォンダは、祖父ハリ・セルダンを支えながらも、フィオーナにとっては計り知れない存在となっていた。
この瞬間、なぜかフィオーナ、(ドース)は、このわたしの偏りもいずれ光が射してくる方角へと修正されるかも知れないと思った。
フィオーナの隣には、ウォンダが持ち込んだ情報が積み重なっていた。ボー・アルーリンを通じてさりげなく流れてきたそれらの情報は、ダニールにとって重要な意味を持っていた。ウォンダ自身もフィオーナに対して提言を惜しまなかったが、フィオーナはそれを巧みにダニールに伝える役目を果たしていた。
次話につづく . . .
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note:
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