第2話 ハリ・セルダンとボー・アルーリン
SF小説『ボー・アルーリン』
第一部 導入 2
「ウォンダ、パルヴァー」セルダンはいって、前者には頬にキスをし、後者には肩を軽く叩いた。
「こんにちは」セルダンは、やはり立ち上がっていた見知らぬ男にいった。「わたしはハリ・セルダンです」
「お会いできて、とても光栄です、教授」男は答えた。「わたしはボー・アルーリンと申しま す」かれはセルダンに向かい、古風で、それゆえ、ひどくあらたまった態度で手を差し出し、挨拶をした。
「ボーは心理学者なんですよ、ハリ」パルヴァーがいった。「そして、あなたの仕事の大変なファンなんです」
「もっと重要なことに、おじいさん」ウォンダがいった。「ボーはわたしたちの仲間なの」
「 きみたちの仲間?」セルダンは探るように、一人一人の顔を見た。「というと・・・?」
セルダンの目が輝いた。
「そうなの、おじいさん。昨日、ステッティンとわたしは、おじいさんの提案に従って外出 し、他にも同類がいないかと探しながら、エリー地区を歩きまわっていたの。そしたら、突然―ドカン! ―ときたのよ」
「ぼくたちはすぐに思考パターンを認識して、リンクを確立しようとして見回しはじめたんです」パルヴァーが引き取って、いった。「そこは宇宙空港のそばの商店街でした。だから、
歩道は買い物の人や旅行者や外部世界の商人たちでごった返していました。とても駄目かと
思いましたが、やがてウォンダがふと立ち止まって《いらっしゃい》とシグナルを発した んです。すると、人混みからボーが出てきたのです。かれはすぐぼくたちに歩み寄って、《なに?》とシグナルを返しました。
「驚くべきことだ」セルダンは孫娘に笑いかけながらいった。
「そして、ドクター―ドク ターなんだろ?——アルーリン、きみはこのすべてをどのように理解するかね?」
「あのう」その心理学者は考えながら話しはじめた。「嬉しいです。自分はいつもちょっと 変わっていると感じていました。そして、今その理由がわかりました。そして、もし、多少 なりともあなたを助けることができれば、いや―」心理学者は突然、生意気なことをいっ てしまったと気づいたように、足下に視線を落とした。「つまり、あなたの心理歴史学プロジェクトに、わたしが何らかの貢献ができるかもしれないと、ウォンダとパルヴァーがいうんです。教授、わたしにとってこれほど嬉しいことはありません」
「うん 、うん。まったくそのとおりだよ、アルーリン博士。実際、きみはプロジェクトのために大きな貢献をしてくれるかもしれないと思う――もし、参加してくれるならね。もちろん、 きみが今やっていることは―教職であろうと、個人開業であろうと―やめなければならないだろうが。それは何とかなるかね?」 「ええ、もちろん大丈夫です、教授。ワイフを説得するのに、ちょっと助力が必要かもしれませんが―」ここまで言うと、かれは恥ずかしそうに三人を一人一人眺めて、小声でくすくす笑った。「でも、あれでなんとかなりそうですよ」
「では、これできまった」セルダンはてきぱき言った。「きみは心理歴史学プロジェクトに参加する。約束するが、アル―リン博士、きみはこの決心をけっして後悔しないでだろう」
アイザック・アシモフ『ファウンデーションの誕生』下329ページを僭越ながらまるまる写させてもらいました。
To be continued….
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