第100話イリーナの勘
第100話 イリーナの勘
SF小説『ボー・アルーリン』
銀河暦12067年=ファウンデーション元年。
惑星ターミナスの大地に降り立つ50人委員会のメンバーたち。先遣隊として派遣されていたダール人のカーリス・ネヴロスとサハ・ローウィンスが、その引き継ぎの式典を指揮していた。
広大な会場には、多くのダール人と新たに到着した人々が集まり、銀河の歴史に残る一幕が始まろうとしていた。
ボー・アルーリンの隣に立つイリーナは、遠くを見つめながら小さく囁く。
「見て、カーリスの姿。まるでこの宇宙を一人で牛耳っているみたい!」
彼女の声には、畏敬とわずかな皮肉が混じっていた。
ボーは視線をカーリスに向け、静かに言った。
「彼の名誉が称えられるのは当然だ。ここに至るまで、ダール人たちは計り知れない努力を重ねてきた。」
イリーナは頷くと、ふと思い出したように声を弾ませた。
「それにしても、あの映像、覚えてるわよね?この銀河の歴史の中でも最高のものだったわ!地球の光景、ウォンダの美しさ、まるで夢みたいだった!」
彼女はこの話題を何度も繰り返していたが、そのたびに目を輝かせる。
ボーは微笑みながら話を変えた。
「イリーナ、もうすぐベリスがターミナスに来る。それも大きな話題じゃないか?」
「ええ!それも聞いたわ。フィオーナさんが彼女を連れてくるらしいの。ベリスって、なんだか神秘的な女性に成長したわよね。」
ボーは懐かしそうに頷いた。
「彼女の夢が現実になったんだ。ベリスはこう言っていた。『ターミナスの新しい働き』と。」
イリーナは、ふと何かを思い出したように口を開いた。
「ねえ、思うんだけど . . . シンパシック・ハーヴェイ号でガールを担いだ怪力の女性、あれってフィオーナさんだったんじゃない?」
ボーは一瞬考え込み、微笑を浮かべる。
「たしかに、その可能性はある。まるで、ハリ・セルダンを陰で支えたドース・ヴェナビリのようだ。」
イリーナはさらに勢いづく。
「そうでしょう?それにガールがドースさんに抱えられて船に運ばれた時、彼女はこう叫んだはずよ。『あっ、おばあちゃん、ドース!』って。」
ボーは苦笑しながら肩をすくめた。
「やれやれ、君は名小説家になれそうだな。」
イリーナは満足げに笑い、そして意気揚々と続けた。
「今度は妹のベリスの番よ!彼女のニフ学の素養が、きっと惑星ターミナスの宝になるわ!」
ボーは静かに頷いた。
「頼もしいね。確かに、我々の役割は次第に終わりを迎えつつある。これからは50人委員会とベリスに託せるだろう。」
しかしイリーナは鋭く指を立て、ボーをじっと見つめる。
「いいえ、もう一人を忘れているわよ、ボー。」
ボーはゆっくりと視線を向け、微笑んだ。
「ああ、まだボケてはいないよ。ガール・ドーニックさ。」
彼の声には、確かな確信と期待が込められていた。
次話につづく . . .
コメント