絵本『夢の中の彼方の星』
小空さんの作品からインスピレーションを受けてYi Yinが創作しました。
—小空さんの絵に寄せて—
- 星の海に浮かぶ雲
夜のしじまに
ひとつの雲が 旅をする
その上に立つ カバは
静かに 耳を澄ませる
「ここは夢か
空の底か」
星のささやきが
雲を そっと撫でる
- 青い星の扉
雲の向こうに
青く 丸い星
まんなかに灯る
オレンジの扉
カバは近づき
夢の鍵を そっと回す
- 根を張る空の木
扉の先には
白い雲に 根を張る木
ヤエヤマヒルギが
空へ向かって 葉を広げる
その根は
星の鼓動に 触れている
夢の命が
静かに 流れてゆく
- ふしぎな住人たち
緑の羽
青い声
光る瞳
星の庭には
見たことのない 生き物たちが遊ぶ
カバは 微笑む
「ここは 夢の中の星なんだね」
- 白い花の約束
ヒルギの枝に
ひとつだけ 咲く白い花
その香りは
時間を 忘れさせる
「花が咲いている間は
ここにいても いいよ」
誰かが
風のように 囁いた
- 朝の気配
星の空に
やわらかな 光が差す
ヒルギの葉が揺れ
花が そっと散る
カバは振り返り
静かに 扉をくぐる
- そして、また夜がくる
星は今日も
空に 静かに浮かんでいる
夢を見る 誰かのために
扉は そっと開かれる
ヒルギの木と
白い花と
ふしぎな住人たちが
静かに
待っている
完



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