スサノオの足跡⑲ オリオンの三ツ星と布都御魂 その1
私がこのサイトに投稿を続けている理由は、投稿するたびに多くの方から貴重なコメントをいただけて、それが非常に研究に役立つ情報であったり、やる気を起こさせてくれるコメントであったりするからなのですが、先日も中原さんというお方から、たいへん貴重な情報をいただきました。
それは市川慎さんという古代史作家のことで、このお方の本は書店やアマゾンでは手に入らず、市川氏のサイトに直接申し込む必要があるために今まで気づきにくかったのですが、著書を読んでみますと、これが長年の磐座研究の膨大なフィールドワークと文献研究に基づいた精巧で綿密な研究成果であり、古代史の闇の一部に光をもたらした素晴らしい知見の連続なのでありました。(市川氏のHPはこちら→古代史BOOK (fc2.com))。
市川氏の本を読んでみて私の研究が進んだ部分も多々あり、今回はそのひとつを取り上げてみたいと思います。それは「オリオンの三ツ星について」です。
エジプト・ギゼーにある三つのピラミッドがオリオン座の中心にある三つの星の配置を模してあるという説は、ご存じの方も多いかもしれません。あの三連星が一直線に並んでいるのではなく、右端の星が微妙に少しだけずれているところまできちんとコピーして、ピラミッドは作られています。
市川氏の研究によりますと、日本にもこの「オリオンの三ツ星配置」を持つピラミッド型の山というのは数多く存在するようです。また、「三島」や「三島溝昨」という言葉もオリオンの三ツ星を意味するもののようです。
ただ、日本の場合はピラミッドの上に草木が生えて、人口の山だということがわからなくなっているだけのようで、オリオン信仰は確実に日本まで伝わっていたのです。
では、なぜ古代人は地上にオリオンの三ツ星配置を再現したのでしょうか?
オリオン座という星座を調べてみますと、あまねく天空の星座の中でも特別に強力なエネルギーを放つ星ばかりで構成されている星座です。たとえば左上にあるベテルギウスという星は直径が太陽の千倍近くあり、しかもそれが末期の大爆発を起こしている最中のようですし、その上、三ツ星の近くにはオリオン大星雲という星雲まであるようです。
西洋で興った占星術では、このようなエネルギーを放つ星の運行が人々の運命や生死、国家の盛衰等に影響を与えていると考えました。そのため、占星術はまだ望遠鏡さえなかった時代にも独自の発展を続け、次第に、星を見るだけでなく、星の動きに働きかけることで人工的に人間の運命を良いほうに向けさせようとする試みが行われるようになりました。
そして、すべての人には宿星という星があり、宿星が落ちるとき、その人の命も尽きると考えられました。占星術が発展すると、この宿星の運行の軌道を変えることで、死ぬ運命にある人が助かったりするということがわかるようになり、その実践法が秘儀として確立されました。
これはヘブライ人たちの秘術「カッバーラ」や、中国の算命占星術等の極意として、日本にも極秘裏に伝わったようです。
日本にこの秘儀が伝わったと考えられるのは、古事記と日本書紀に書かれている神武東征譚の中の、高倉下という人物が瀕死の神武天皇を蘇生させるストーリーにおいてです。
記紀によりますと、神武軍は東征の最中、敵の放った悪気によって全軍が昏倒します。
神武天皇自身も倒れて意識を失い、全滅の危機にあったところを、高天原から派遣された高倉下という人物が神剣・布都御魂を持って現れ、それを神武天皇の枕元にかざしただけで天皇は蘇り、元気を取り戻したと書かれています。
この剣はもともと武御雷命という人物の剣であったもので、高天原の主人である高木神は最初、武御雷命を神武救済に向かわせようとしたところ、武御雷命は「私が行かずとも、この剣があれば大丈夫でしょう。」と答えたので、高倉下に命じて布都御魂を神武のもとに届けさせた、という記述になっています。
この記述から感じ取れるのは、布都御魂という剣がいかに貴重で神秘的な力を持っていたかということを、ことさらに強調しておきたいという筆者の意図です。特にそれは古事記のほうに強く感じられ、全巻の文書量では日本書紀より圧倒的に少ない古事記が、この神武東征譚のこの部分だけは日本書紀よりもむしろ丁寧に、長々と描写してあります。
剣というものは通常、人の命を絶つために作られるものですが、至高の名剣ともなると、人ではなくて死神(星から放たれる死の波動)のほうを斬り、人の命を助けることもできたようです。それがこの布都御魂であり、スサノオの持っていたとされる「布都斯御魂」も同様の神剣と思われます。
現在、石上神宮にはこの布都斯御魂と布都御魂に加え、布留御魂という神宝も奉納されていますが、布留御魂は剣ではなく、十種神宝というものだそうです。
そして、この「十種神宝」こそ、カッバーラや聖書に登場する「生命の樹」の変形と思われ、「生命の樹」に描かれた10個の「スフィロ」という球状のものがそれぞれ十種神宝のひとつひとつに対応するようです。
さらに、この10個のスフィロはそれぞれが天空の星に対比されています(図表参照)。
つまり、布都御魂や布留御魂は、カッバーラの秘儀「生命蘇りの秘法」を行うための神器
であり、古事記の作者はそれがどれほど神聖で重要なものであり、なんのために使われたものであったかということを、神武天皇蘇生という寓話を通じて訴えかけている、と考えられるのです。
・・・蛇足ながら、スサノオの持っていた「布都斯御魂」は、布都御魂と同種の神剣ながら、スサノオがペルシア(波斯)の出自であったためにこの名がついたのではないか、と私は考えています。
補足として、「布都(フツ)」、「布留(フル)」という言葉はともに、星の運行に関する言葉でもありうる、ということも指摘しておきたいと思います。
現代でも「星のふる夜」とか、「流れ星がフッと消えた」という表現をしますので。
語感からしますと、「フツ」が星が消えるときの音。そして「フル」が星が輝く時の音のようです。「布都御魂」が死んだ生命を蘇生させる剣であり、「布留御魂」が生命を永らえさせるための神器であることを考えますと、意味が一致します。
もうひとつ、以前、これもFBでよくご意見をいただいているYiYinさんというお方から、武御雷命という名前には、旧約聖書に登場する「大天使ミカエル」の名前が隠されている、という指摘を受けたことがあります。旧約聖書にも「生命の樹」が登場しますので、この武御雷という名前にも「生命蘇生の秘法を受け継ぐ者」という意味が込められていたのかもしれません。・・そう考えながら「生命の樹」を見ますと、なんと真ん中のスフィロに「ミカエル」の文字が!・・・(図表をご覧ください)。
(参考HP。今回の図表はすべてこのHPからお借りしました。)
【生命の樹と十種神宝(とくさのかんだから)】 – Yohkoの“はごろも通信” (hatenadiary.com)
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