ペイリー・リャン

ターミナスへの帰還


ペイリー・リャン
エピソード第183話 ペイリー・リャン

ターミナスへの帰還 第1話

エピソード 183

ファー・スター2世号のコックピットは、無数の光点が瞬く宇宙を切り取るように広がっていた。

ミーターは、その中心で忙しなく操作パネルに触れながら、隣に立つペイリー・リャンに向かって声を上げた。「ペイリーさん、ここがこの船の心臓部だ。運航は全てイルミナに任せてある。いわば艦長だな」

イルミナは、滑らかな金属の質感を持つコンソールから、優雅なホログラムの蝶を舞い上がらせた。それは、ペイリーの方を向き、無機質な声の中にどこか親愛の情を込めて言った。「ペイリー・リャンさん、これからも宜しくね!」

ミーターは顎を撫でながら、二人の様子を興味深そうに眺めた。「そうだ、お前たちは、もうお互い知っていたんだよな」

ペイリーは微笑んだ。「はい、月で女性同士、すぐに仲良くなりました。

R・オーロラ・ルナセントからも女性について色々と教わりましたけど、イルミナさんの方がずっと詳しくて」

「当然だろうよ」ミーターは胸を張った。「なにしろ、イルミナはアルカディアの秘蔵っ子だからな」

ペイリーの瞳が輝いた。「アルカディアさんの秘蔵っ子 . . . パパが教えてくれました。アルカディアさんは、私たち人類の模範だって」彼女はミーターに顔を向け、少し興奮した様子で続けた。「ミーターさんは、そのアルカディアさんの親友だったんですね!もっとアルカディアさんのことを知りたいです!」

ミーターはニヤリと笑い、「任しときな、ミス・エンノビアレラさん」と言った。

ペイリーは少し頬を膨らませた。「その呼び名はやめてください。ペイリーかリャンで、お願いします。赤ちゃんの時にガイアからコンポレロンに養子として移されたので、ガイアのことは全然覚えていないんです」

ミーターは咳払いをして話題を変えた。「ところで、俺らはとりあえず、第1の任務は終了した。怖い思いもたくさん経験したな」

ペイリーはイルミナの方を振り返り、いたずらっぽく笑った。「イルミナさん、ミーターさんのデオライト採掘の時のあの姿、見せたかったですね!」

ミーターは慌てて手を振った。「ペイリー、その話はもうよしてくれ!イルミナだって、この俺が高度恐怖症だってことは知ってるんだから!」彼は真剣な表情に戻り、「そんなことよりも、今後の俺らの使命だ」と言った。

「そうだわね!」イルミナが応じた。「地球再発見、そして地球の放射能除去がほぼ完了しましたね!」

ミーターは感慨深げに頷いた。「念願の大きな第一歩ってところだ。ダニールの多大な誘導によって為し遂げられたと思う」

ペイリーは静かに言った。「それがパパの宿願でした。いつも私に諭していました。『あのガールの証古学のおかげ』だって」

ミーターは眉をひそめた。「むー、またしてもガール・ドーニックか?」

ペイリーは力強く頷いた。「ガール・ドーニックですね!」

ミーターは操縦桿を軽く叩き、「俺らはターミナスに帰るのだから、ガール・ドーニックの故郷星シンナックスに寄ってもいいな」と提案した。

「そうですね」イルミナは同意した。「ミーターさん、次の私たちの使命って考えたら、混沌、暗黒の銀河からの復興でしたわねぇ!」

ミーターはペイリーを振り返り、真剣な眼差しを向けた。「そうなんだ。その使命の達成には、この人間の、この女性、ペイリー・リャン・エンノビアレラさんを俺らに同行させたんだな」

ペイリーは少しだけ語気を強めて言った。「ミーターさん、ですから、そのエンノビアレラっていう言い方は、結構ですから、お願いしますね」

ミーターは手を上げて笑った。「わかった、わかった。アハハハハ、ペイリーって呼ばせてもらいますよ、月女様」

「ミーターさんったら!」ペイリーは軽く抗議した。

イルミナは穏やかな声で言った。「ペイリーさん、大目に見てください。ミーターボスの悪い癖ですから、人をからかうのが好きっていうか」

ペイリーは苦笑した。「イルミナさん、慣れるまで大変ですよね、きっと。分かりましたよ。あなた方にはパーソナルは必要ないでしょうけど、私にはちゃん必要ですから、許してしんぜますよ」

イルミナは再びホログラムの蝶を舞わせた。「そうですね、このファー・スター2世号には、人間の生存に必要なパーソナルもちゃんと完備しておりますので、ペイリーさん、ご心配ないわ」

「有り難う!」ペイリーは心からの感謝を込めて言った。未来への期待と、故郷のない寂しさが入り混じった感情が、彼女の胸に静かに広がっていた。ターミナスへの帰還は、新たな物語の始まりを告げる鐘の音だった。

つづく

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