黒曜石の意味
ミーターの大冒険 余白 第33話 黒曜石の意味
ヴァレリー: またまた畏れおおいご発言ですこと、銀河一のジャーナリスト様!
我が地球の人類の方々がこの天の川銀河の遥か彼方に飛翔する、ということは無数の血と悲劇を乗り越えによって成し遂げられるというのですね!
その悲劇の中でも何と言っても、核兵器の使用と民族同士のジェノサイドであると思います。その他、古代の歴史消滅、無数のダニール・オリヴォーによる文芸復興の挫折の連鎖も挙げられるかも知れません。
そしてついにハリ・セルダンの養子レイチのサンタンニでの悲劇の事件を通して、やっとハリ・セルダンと孫娘のウォンダ・セルダンとを助けたボー・アルーリンとガール・ドーニックの活躍の結果、22世紀にジョン・ナックが考案した証古学の現実適応が実現されたのです。そしてミーター・マロウ様のご活躍で果実が実ったと申せましょう。
ハニス: いや飛びに飛んで纏めて仕舞われましたね。恐れ入った。実にジョン・ナックによる「宇宙潮流」の発見から2万年が経過しているわけだ。その宇宙潮流とダークマターと宇宙エネルギーの調和の技法こそ、「混沌」を克服する手立てであり、真実の秘法だというのですね?
ヴァレリー: 貴方様こそ超短縮形を使われましたね。
ハニス: すまん、すまん。キミの弁舌に影響受けたもんでんね。
そこでだ。ジェノサイドの話しをする前にニフの縄文時代のことにもう一度触れておこうと思う。
6万年前にニフ人たちがニフ列島に漂着して1万5千年が過ぎた頃、ブリヤート人が北方からやってきて黒曜石を含めた細石刃文化をニフ人に伝播した。
このブリヤート人は、極少数だったと推測できる。
だが、後の3万5年前からはじまる縄文文化に、画期的衝撃的影響を与えた。
もしかして、ニフ列島には黒曜石の岩盤がより多く産出したのかも知れない。この黒曜石の使用というのが、後のニフ文化の特徴の源泉と言っていいだろう。
ヴァレリー: 博士、それはハリ・セルダンの「極素輻射体」に匹敵すると言いたげですこと?
ハニス: まさに、まさに、おっしゃる通りですね。それと「極素輻射体」製造以前の「陽電子頭脳」にも匹敵することを忘れてはならないね。
その黒曜石の刃の鋭利なこと!まるで火山列島の賜物と呼ばれるにふさわしい。ニフ人は彼らの足下に広がる大地に無限と永遠の賜物を見たのだよ。
彼らは、今度は石と同時に地面に着目した。
ブリヤート人がカモシカの骨を繋ぎ合わせて物を入れる容器を造ったように、土から土器を捏(こ)ねた。
これが文明のはじまりだよ。土の利用、これ以上の発見はないね。
ヴァレリー: そう言えますね、先生。
ハニス: そして、同じ鉱物資源から、装飾品を選り分けた。年代が下って行くに連れて、それが概ね、貴重品として「瑪瑙」の「勾玉」の首飾り、そしてやがて「翡翠」の「勾玉」の耳飾りに利用されて行って、交易品として用いられ、遠く海外へも波及して行ったということは驚くべき伸展と言える。
当時のニフ人たちは北東アジアの地域全般に商い品を伝搬できたというわけだ。言うなれば、鉱業、工業、商業、そして狩猟採集と同時に秀でたわけだ。
方や、鉱山堀りは様々な鉱物資源の利用へと新たな文化高揚に役立っていったのだよ。たとえば鉄とかだね。後にキナでは、ニフ時代の鉄剣がキナの料理の必需品の鐵鍋の材料として加工されたとかね。ニフ人の手の器用さは、絶妙といえるね。ハッキリ言って、次の時代の基盤も築いたのだ。
ヴァレリー: 鉄ですか。そういえば、イライジャ・ベイリーの時代の地球文明の「鋼鉄都市」が思い浮かびます。
ハニス: この鉄が当然、かつての黒曜石の代理品として利用されるに及んで、人を殺(あや)める殺戮兵器として変貌する。その進化形が鉄砲や大砲だね。そしてそれがジェノサイドに使われる。悲惨なことだ。それが根本的ジェノサイドのはじまりって言うんだ。さらにこの工業からウランやプルトニウムを使った核兵器発明へと破壊的破滅へとフォーカスされる。
ヴァレリー:悲惨な歴史で、それを第一回歴史消滅と言うのですね。二回目はヒロシマへの原子爆弾投下ですね。鉄の進化形が核兵器ですか?
ハニス: うむ、ヴァレリー君、核心に迫って来ましたね。ぜひその事態について述べてくれ給え。
ヴァレリー:その悲劇的歴史消滅は、根本的にダニール・オリヴォーの銀河歴史消滅と性格がまるで違います。ダニール・オリヴォーによる銀河歴史消滅は、人類の新たな飛翔を人類文明の継続・保存のための止むを得ずの行使でした。方や、人類による歴史消滅とは、彼らのよって立つ非道を闇に葬り、彼らに残虐行為の罪状を無かったものとする破廉恥行為です。
ハニス: まさにそうなんだよ。彼らがやった残虐行為を無かったものとしまう政府とメディアの陰謀工作なんだよ。それを洗いざらい世界の表面に明るみに出したのが23世紀にジョン・ナックだったんだ。「真実を真実に」がかれの表明だった。それをかれは『歴史思想書』
で明らかにして世界を動かしたんだ。
しかし、その勇気ある行動に対して人類は、本当の意味で悔悛には至らなかった。
ヴァレリー: それを罪悪の上塗りっていうのですね、博士?責任回避のレトリックは断じて赦されません。
ハニス: まさにその通りだよ、ヴァレリー君。是非とも、そのジョン・ナックの告発の表明文を繰り返してくれたまえ。
ヴァレリー: はい、「ひとの幸福は、この大地からの恩寵すべてと和合することにある。ひとは先祖からの尊いひとの生きるべき道に沿って生きるとともにに、未来人の先祖としての謙虚さがもとめられる。実際、我らの7代先の子孫との対話によって今の生活を営むことが大切なのだ」です。
ハニス:まさにまさに、ニフ人のこころとアメリカ先住民の言い伝えとの調和思想だね。それこそ真の未来人としての生き方だね。
そこで、今から俺は、人類の負の遺産について明示したいと。
次話につづく . . .
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