ミーターの大冒険 余白 第35話 珪化木のオパール
ハニス: それを言うなら、不思議なことにアンセルム卿が行かれるヤマブキ銀河こと大マジェラン銀河も、その珪化木のオパールとまったくソックリだったという。
ヴァレリー: まあ、それはなんとも神秘な宇宙の悪戯なのでしょうか!新たに造られたサンタンニ天の川銀河図書館で回復された改訂版の新銀河辞典の「珪化木のオパール」という項目に次のような件がございます。
「オパールは主に火成岩または堆積岩のすき間に、ケイ酸分を含んだ熱水が充填することで含水ケイ酸鉱物としてできる。そのほかにも、埋没した貝の貝殻や樹木などがケイ酸分と交代することで生成されたり、温泉の沈殿物として生成されるなど、各種の産状がある。特に、樹木の化石を交代したものは珪化木と呼ばれる。」
ハニス: うむ、そうなんですか。オパールも瑪瑙も珪化木由来の可能性大か!
超類似性の奥義が神秘の宇宙にはめぐらされている、としか思えないね。銀河と銀河の張り巡らされている泡・ウェッブ構造は、なんと人間頭脳内のシナプス状になっているんだからな!
君はさっきジョン・ナックの悟りとか珪化木の誓いとか言われましたが . . .
ヴァレリー: そうなんです。貴方様、叡智の老ハニス様。ここ最近になって惑星シンナックスの父、ジョン・ナックの人となりや生涯が分かってきたのですから。そして何回もの挫折から、なんと貴方様と同じ、北米大陸を横断中に事故に見舞われ、意識を失い、夢の中でインディアンのシャーマンが現れ、もう一度再生した後の人生を描写させたという逸話があります。まるで貴方様と境遇がソックリじゃないですか。
ハニス:むむっ!しかもだよ。彼、ジョン・ナックはその出来事の後、人類を銀河へ誘う大構想を打ち立てるのだからなぁ!
だが、まあ、それに比べれば、俺なんぞ、外銀河への派遣隊の一員になれるだけの存在でしかありえないからね。ジョン・ナックと比べようにもない。
ヴァレリー: あら、それはどうでしょう、謙遜すぎるというものです。どう考えても、今回の外銀河への企ての大元と言えば、大、小マジェラン銀河。それにダニール・オリヴォーのアンドロメダ銀河への大派遣隊の計画には、貴方様のご努力が大いにございます。
どうでしょう、こうお考えなさっては、アルカディア様のご晩年に、偶然貴方様はベリス岬の洞窟に落ちて、『ジョン・ナックの歴史思想書』の断片を発見され、叡智のアルカディア様はその中に記されてあった人類の未来への構想を見出し、それを、貴方様とミーター・マロウ様に後事を託されましたね。しかも、あの偉大なるダニール・オリヴォー様は、ミーター様、イルミナ様の懸命なお姿をご覧になられ、人類歴史再構築の決断をされ、アルカディア様の魂ともいうべきイルミナ・ダム様に代わって養女ペイリー・リャンをご参加させられたのですから。もとをただせば、貴方様、ジスカルド・ハニス様のご存在なしでは何事もはじまらなかったのではありませんか?
ハニス: そこまで言われるとは、大変、この上ない賞賛です。有り難いお言葉、痛み入る。
ヴァレリー: そうですよ。貴方様も珪化木によって生まれ変わられました。意気揚々、是非とも小マジェラン銀河にお翔
びください。遅ればせながら、わたくしも貴方様の後を追いかけますので。
ハニス : お礼を言わせてもらいますぞ。イルミナの生まれ変わり、いいや、往年のアルカディア・ダレル様に瓜二つのヴァレリー殿!
次話につづく . . .
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