ミーターの大冒険 余白 第30話 ニフ人の意味
ハニス そう来ると思ったよ。そんなこと一言で言えるわけはない。しかし、どう答えたらよいかと。しいて言えといえば、ニフ人の由来から、考えることはできるかも知れない。すまないが、ニフ人の基本情報をたのむ。
ヴァレリー はい、人類が地球のアフリカで約20万年前に発生して、約8万年前にアフリカから出て、様々なハプロタイプに細かく分布していきます。
そして約5万8千年前にニフ列島に辿り着きます。
ハニス そこで重要となるのは二つの要素だな。
ヴァレリー はい、ひとつ目は、アフリカ大陸からユーラシア大陸を東の端に向かって遠距離の漂泊と漂流の経験のおもみですね。おおまかに見積もっても約15000キロの距離ですね。
ハニス うむ、まず約3万8千年かけて、その種族は、様々な経験を繰り返しながら、学習を重ね、ある時は他の種族と融合しながらユーラシア大陸の東部までに到達した。それから、おそらくその東部の島嶼部から日本列島に舟の航海で漂着したということだな。
それでは、その航海はどのように考えられるのかな、ヴァレリー研究生殿?
ヴァレリー 日本列島に人々が漂着する過程や移動にかかる期間は、当然、歴史的に複数の要因やルートによって異なります。具体的な期間や時間は正確にはわかっていませんが、いちおうの推測から2つのルートを考えてみますと、
まず、南方の島々からの海洋ルートがあげられます。この移動には、航海技術や気象条件、船の種類などが影響を与えましたが、数週間から数か月かかった可能性があります。
次にユーラシア大陸の東端から日本列島への移動については、陸路や海路の両方があげられます。その場合でも少なく見積もってもその期間は、具体的なルートや移動手段によって異なりますが、数週間から数か月かかった可能性があります。
でも、これは一回だけで成功したとは考えられません。相当の試行回数も考慮に入れなければならないでしょうね。ここでも経験と学習の積み重ねが重要な概念になります。
ハニス よろしい。妥当な推測だ。次にもうひとつの重要な要素とはなにかな?
ヴァレリー それはニフ人が長距離と年月をかけて漂泊の過程で他のホモ・サピエンスにない遺伝形質を獲得したことです。
ハニス 驚いた。それは他のホモ・サピエンスの種族とは違った精神構造と生活様式があったというのだな。
ヴァレリー そうなんです。そのユーラシア大陸の東端に達するまでに、同じホモ・サピエンスの他の種族と混淆したばかりでなく、ホモ・サピエンス以外の人類とも混淆した形跡が認められるのです。その結果、微妙に他のホモ・サピエンスと違った精神構造と生活様式を有するようになったという学説があります。そのホモ・サピエンスの一種は他の種族と違った、ヤップ遺伝子を有していました。
その後の研究によって、その遺伝子の残留度は高い確率で、ニフ人に受け継がれていると仮定できますけど。
ハニス 面白い!具体的には?
ヴァレリー そのヤップ遺伝子の特徴は、概ね、優しさの遺伝子、あるいはマイナスイメージの悲観しやすい遺伝子ともいわれます。
ホモ・サピエンスとは違う、後に、消滅してしまう人類のネアンデルタール人やデニソア人という人類の遺伝子の混入といわれます。
そして当時6万年前には、ユーラシアの東には、当時ヴュルム氷期で海面が120メートルも低下していたとされ、その南東には、スンダランド、さらにその南東にはサフル大陸がありました。そのような状況のなか、ある種族は島伝いに北上して行ったと思われます。
ハニス 優しさと悲観の遺伝子か!相対立する概念だが。
こうとも言えないでしょうかね!
冒険の遺伝子?
ヴァレリー さあ、その少しばかりの差の遺伝子混入率が、どれほど人類の生活態度に現れるのかは、そう簡単には限定できないでしょう。
ハニス 要は、その遺伝子に差異かどうかはともかく、ながい年月の漂泊、漂流、そして最終的には舟を操る航海術の技術などによる、学習と経験の多い環境が後のニフ人の得意な性格を形作ったと言えるのではないかな。
ヴァレリー さすが教授、うまくまとめてくださいました。ですが、教授、ニフ人について、大事なもう一つの面を強調しなくてはならないのですね。
ハニス ほう、それはなんだね?
次話につづく ...
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