ミーターの大冒険 余白 第36話 ガール・ドーニックの故郷星探査報告書
ヴァレリー: ハニス様の名講義により、ジョン・ナックの生涯における重要事項が明らかになってきましたね。ニフ人の事象を通じて、地球文明の核心が浮かび上がりつつあります。これに対し、古代西洋文明の偏りがもたらす危険性も見えてきました。あの地球の鋼鉄都市文明(セッツラー)と比較すると、2000年も早く宇宙に飛び出したスペーサー文明(惑星オーロラを含む50惑星連合体)の非人間的な科学文明には欠陥が見られますよね。うふふふ!
ハニス: 仰る通りです、占い師ヴァレリー殿。
ヴァレリー: お褒めの言葉がますます過ぎますわ。極上のアルコールでも召し上がっているかのようにね!
さて、お言葉に甘えて申し上げますが、先生は天の川銀河外への派遣隊とスペーサーやセッツラーの地球外ジャンプを比較する際、最も重要な点をどうお考えでしょうか?スペーサーの決断と地球文明に対する偏見の危険性について、先生はお考えがあるのではありませんか?
ハニス: 確かにその通りだが、さらに言えば、私は沈黙していた方が幸せかもしれませんねぇ。
ヴァレリー: 私もAIの身でありながら、先生のお考えが伝わってくるようです。スペーサーが宇宙飛躍を決断したその動機に問題があるのでは?
ハニス: その通りです。続けてください、ヴァレリー。
ヴァレリー: 先生は、スペーサーが、ジョン・ナックの思想を模倣し、例えば北アメリカの富裕層が「我々はインディアンの土地を奪い、ジェノサイドを行った罪を悔いて、その土地を返還しよう」と宣言しつつ、善行を装って宇宙に飛び出したように、無責任な行為を糾弾されたいのではないですか?
ハニス: まさにその通りです!責任逃れも甚だしい。
ヴァレリー: それに対して、シンナックス人はスペーサーより1000年も前に、地球文明に失望して宇宙に飛び出したのです。その違いを強調したいのですよね。
ハニス: あまりにも的確で、私が話す機会がなくなってしまいそうだ。
ヴァレリー: そうおっしゃるなら、僭越な態度を控えますね。なにしろ、私は看護婦長イルミネーショナースですから。
ハニス:そんなことは言っていませんよ。つづけたまえ。
ヴァレリー: それでは、気を取り直して話を進めますね、ハニス老人。ガール・ドーニックの「微細心理歴史学」についてです。ハリ・セルダンの最終末時に提出された「故郷星探索報告書」に基づいてですが、私の推測に過ぎませんが、その「微細心理歴史学」の核心はガールの学術手法である「証古学」の発展形にあるのではないでしょうか?
ハニス: キミの名講義が的を得ていて 息が詰まりそうですよ、看護婦長殿。
ヴァレリー: そして、そのガールの研究に多大な助言をしたのが、盟友ボー・アルーリンの「心理化学」の洞察だったのでしょう。例えば、両性具有者や、性急にガイアを創造したミュールという化け物を生み出してしまう「ロボット第零法則の限界」とか、そうした問題も含まれるのでしょう!
次話につづく . . .
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