
ミーターの大冒険 余白 第9話 地球標準年
ハニス かねがねこの今の地球に足りないものを熟考していたのだがね。大事なことに気がついたのだよ。
古代の地球にあった「グリニッジ標準時」のようにこの銀河には「地球標準年」というものが必要なのではないかと。
ヴァレリー どういうことですか?
「地球標準年」?
ハニス そうさな。地球が回転しているように銀河も回転しているのだが、地球には古代、グリニッジというところを軸と定めて、経度ゼロ度という経度線を仮に設定して24時間を1時間単位で刻むようになっていた。これを全銀河の惑星も同様に当然のように応用していたが、銀河の中心がコンポレロン、ティラニやトランターと移るに従って地球の記憶は薄れ、それを使わなくなった。その代わり各自の惑星はそれ自体の惑星の自転速度に従って独自の標準時を決めるようになった。
だから、500前以前には銀河の旅行者は航空船内ではトランター標準時を使用した。
今ではターミナス標準時だ。
ところが今や、そのターミナスの繁栄と影響力も過去のものになりつつある。
サンタンニ政府は、そこではたと、困った。 そのあげく、ヤッパリ地球の時間観念に戻したらどうか、とコンパーが俺に打診して来たんだよ。
そこで考えた。よくよく考えた。
ヴァレリー君、この俺はもうだいぶ歳だが、君のお陰で、もう一度頭脳も甦った。
君に感謝を捧げようと思い付いたことがあったのだよ。

ヴァレリー それは、なんですか?
ハニス イルミナだよ。
ヴァレリー まあ、私の顔はイルミナさんの写しですからね。

ハニス そう。ペイリーさんとターミナスの帝国辞書編纂図書館の地下に潜入したことがあった。政府側はイルミナとファー・スター2世号の全機能を停めようと2つのパスワードを探していたんだ。1つ目のパスワードは突き止められてしまった。ウォンダ定数だよ。
しかし、結局2つ目のパスワードは幸いにも、突き止められなっかみたいだった。
今、イルミナ自体は、ペイリーさんの魂と合一して生きている。
そのペイリーさんが、そのことのあとで、アンセルム・ロドリック卿に訊ねたことがあった。
ヴァレリー それで卿のご返事は?
ハニス 彼はおそらく知っておられたと思う。
しかし、その時、どうやら、話題が逸れてしまったと朧気ながら、思い出す。
ヴァレリー 結局、分からず仕舞いとなってしまわれたのですね。
ところで、その第2のパスワードと「銀河標準年」とは、どういう風に繋がるのですか?
ハニス ああ、そうだったな。
2つ目のパスワードだったね。あの時、ロドリック卿が俺らにそのことを証ししなかったのには、俺らに銀河の後事を託す、という意味合いもあったのではないかとあとになって気がついたのだよ。
ヴァレリー まあ、ながいお話になりそうですね。でももっとさらに興味深くなってまいりましたね。
ハニス そう言ってくれれば有難い。ジャーナリストとしての勘が動いてきたようだ。
そこで、あの博学なジャノヴ・ペロラット君にハイパー・ウェーブ通信で相談してみた。
彼の返事はこうだ。
「自明の歴史と自明の歴史のはざまに隠れて消えている部分が宇宙史にとって最重要となります」、と。でなかったら、月に不死の従僕をお訪ねすることですね、ともね。
いいや、人間として最善を尽くすことだと、思い、その消された事実に全精神を集中したんだ。

そしたら、浮かび上がってきたのが、ガール・ドーニックによる二度の地球探索だ。
それを丹念にイメージしてみた。
そうしたら、どうやら、彼の探索以前に彼の探索に続く必然性としての事実が見えてきた。
ヴァレリー パスワードとガール・ドーニックの地球探索との関連ですか?
ハニス そうだが、それをさらにその奥を深堀りしたのだよ。
To be continued …

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