
ミーターの大冒険 余白 第19話 ハニスの記憶から抜けていた重大な3事実
ヴァレリー そういうことで、アルカディア様は、ダニールに対して、そっと銀河歴史消滅の扉を抉じ開けて頂くように囁かれたのです。
ハニス ああ、絶妙な!不可思議の大王!
ヴァレリー 旧約聖書、イザヤ書、9章6節。
ハニス まさに!
でも、なにか古代のニフ人の物語にも似たような出来事があったような?
ヴァレリー 天(あま)の岩戸の古説話ですね。アマテラスオオミカミの岩戸の抉じ開けの伝説ですね!
ハニス なんと、そこに話しは行き着くのか!
でも、ダニールは男性ロボットでお願いするのが人間の女性、という違いはある。
ヴァレリー アルカディア様は、彼女が亡くなった後に、ミーター様とイルミナに代りとしてその遺業を任されたのです。
しかも、絶妙なのは、ダニールが保護されていたペイリー・リャン様がイルミナから引き継ぎを受けたのですからね!
ハニス まさに、まさに!俺の回りで起きていたのにその深いからくりの意味まではわかっていなかったという、至極軽卒な俺だったことか!嘆かわしことこのうえ無い!
ヴァレリー ハニスさん、そんなにご自身を卑下するものではありませんよ。ハニスさんがいなければ、この大業は為し得なかったことは明々白々でしたから。
ハニス そう言ってくれることは、ありがたい。少しでも気が楽になるってものだ。
ヴァレリー いえいえ、当然のことを言ってるだけですから、お礼には及びませんよ。
それにですよ。
ここからが、もっと大事なこととなります。
ハニス もっと大事なこと、だと?
ヴァレリー そうですよ。いいですか、あなた様は、先ほど、ダニールのことを心配されました。
あなたはすっかり、ご自身のご任務の重要性をお忘れなさっているか、見落としておられるようですよ。
ハニス なんだって?それはどういう意味か?全く茫然自失ということはこういう事態をいう?
ヴァレリー 落ちついて下さい、ジスカルド・ハニス様。
わたしの言葉を、ゆっくりお聞きください。
呼吸を調えて、お聞きください。
ハニス わかってる!今、深呼吸している。もう一回したら、話してくれたまえ、有能な美人の主治医様。
ヴァレリー 先ほど、私どもが到達したところに戻りましょう。
わたしは、「非陰陽」、「超陰陽」と申し上げました。
ハニス そうでしたな。
ヴァレリー そこからまた話しを申し上げます。
この銀河は5年前に、ハッキリと混沌と無秩序から復興と光明ヘ転回がはじまりました。
ハニス そうだよ。間違いはない!
第1ファウンデーションの2名、ゴラン・トレヴァイズとジャノヴ・ペロラットと、当時23歳の美形のガイア人女性、ブリス・エンノビアレッラの計3名が地球の衛星、月でダニール・オリヴォーと遭遇したのだ。
ヴァレリー そうです。ただ、もう少し捕捉が必要ですよ。
ハニス なにか抜けているっていうのですかな、情報局のお嬢さん?
ヴァレリー 彼らが月に到達した段階では、ダニールの養女のペイリーさんはおりませんでした。
ハニス そうだとも。そのときは確か、ミーターとペイリーさんは、もうすでに地球におられた。ただし、彼ら、後発隊にはその段階では地球の汚染駆除の実態は伏せられていた。
ヴァレリー その他に大事な3点がありました。
ハニス きみの言ってることが正しいとしたら、俺としたことは慚愧に耐えない。
ヴァレリー また、弱気になられて。大丈夫ですよ。そのためにわたしがいるのですから。ご安心ください。
ハニス 面目ない。それで、その3点とは?
ヴァレリー まず一点目は、彼ら3人が連れて来た惑星ソラリアの両性具有人、バンダーの子ども、ファロムのことです。
ダニールは、すすんでその両性具有の子どもファロムを月に置いていくように3人に要請しました。
ハニス そうだったのか!両性具有人の子を、ねえ!
ヴァレリー 第2点目は、第2ファウンデーションのこと、ムン・リ・コンパーのことです。
ハニス 確かに、俺は、第2ファウンデーションについては、フォローしていなかったかも。
確かに、大事な視点だ。
ヴァレリー まず、第2ファウンデーションも、第1ファウンデーション同様、銀河復興と例の2人組のこととターミナス政府のことは注視していました。
ここ20年近くは、エージェントの数を大幅に増やして、ターミナスや銀河各地に送り込んでいました。
その一人が例のコンパーです。
第2ファウンデーションは「観測員」としてエージェントを派遣しておりました。
ハニス 「観測員」ねえ?
ヴァレリー しかもですよ、コンパーは、発言者のストー・ジェンディバルの直接的な代理人として頭角を現し、ターミナスの国会議員にもなっていました。しかも、後で詳しく申し上げますが、惑星コンポレロン出身で、深くガイア人たちとも親密であったとか。
ハニス へえ、道理で我が爺さんもそうなんだが、因縁の関係であったということは言える。
ヴァレリー そのジェンディバルに付き添っていたのが、スラノヴィ・レムブラスティラン、惑星ガイアのドムの娘でした。
彼女の活躍はジョンディバルとの同調であり、彼らを尾行してきた第1ファウンデーションのブラノとコデルへの覇力への喪失感を助長しました。
ハニス なんだって、これも大がかりな出来事だったんだな。知らなかったとは言え、俺の諜報力も今一といえるなあ!
ヴァレリー そう嘆かないでください。全部それらはハニスさんの責任ではありませんから。
ハニス それにしても、なんたる恥だ。
そして最後の3番目のことは?
ヴァレリー コンパーさんにもかかわることです。
今から、30年前のことです。
ハニス ということは、ターミナス暦でいうと475年ですかな?何があったというのですか?
ヴァレリー そうです。あの惑星セーシェルの一回目のガイア攻略の後、ずっとしばらくたって、もう一回ガイアに対して攻略をしかけて来ました。
ハニス それは知ってる。
その時もセーシェルは惨敗したという。
待てよ、その時期は第1ファウンデーションと第2ファウンデーションの相克の時期と重なる。
ヴァレリー そうです。第2ファウンデーション機関の本拠地をコンポレロンに移していたし、ガイア人も女、子供をコンポレロンに移して安全を確保していました。
最近、わかったことなのですが、あのペイリー・リャンさんも4歳の時、センノビアレッラ家からコンポレロンのキナ系住民のリャン家に匿われていたのです。そのリャン家の隣がリ家で、ムンという男の子がその家の息子で、隣のペイリーを可愛がっていたのです。ペイリーもその少年を慕っていて、いつも「お兄ちゃん、お兄ちゃん」と言っていたそうです。
ハニス なんとまあ、驚きだあ!彼ら2人は子供の頃の知り合いだったとは!あんなにペイリーさんはコンパー君のことを良くは言ってなかったのになあ!
じゃあ、ペイリーさんの本姓は?
ヴァレリー そうです。センノビアレッラ。後発のガイア人女性、ブリス・センノビアレッラのと同じです。
ハニス それじゃ、ペイリーさんはあのブリスのお姉さん?
ヴァレリー そうですよ。
To be continued …
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