ミーターの大冒険 余白 第12話 ガール・ドーニックの「証古学」とは?
ハニス あのイルミナのおかげで、地球の2万年前の文化、文明がもう一度、明らかになったんだ。君を見てると、イルミナを思い出すね。
ヴァレリー ハニスさん、イルミナさんの実体は、アルカディアさんですよね。その構想には、あなたのお力もおありになられたんですよね。
ハニス まさしく、君の言うとおりだよ。そのためにレアメタルをもとめてトランターに赴いたものだ。
イルミナのおかげで、地球時代の解明が解きはなたれた。今でも時々刻々、古代の情報が明らかになっていて、シウェナ、スミルノ、シンナの各図書館にその情報が集積され、その知的結晶が、銀河中央のサンタンニに送られている。
その中心で活躍しているのが、証古学を駆使している、ジャコヴ・ペロラット教授だ。
ヴァレリー 証古学といえば、ガール・ドーニックの貢献の産物ですね?
ハニス おっしゃるとおりだ。でも、この証古学は、彼独自のオリジナルでもないのだよ。
彼は2度の地球探査によって、古代のシンナックス人の元祖のジョン・ナックの思想の輪郭を掴んだんだ。それによって、「微細心理歴史学」を展開していったんだ。
ヴァレリー そうですよね。ガール・ドーニックやイルミナさんのおかげで、今では当たり前のように古代にあった学問が再発見されて、再構成されているのですね。
ここ10年で、銀河2万年の歴史の中でも急激な変化と言ってもいいですよね。
ハニス 君に聞きたい。どんな学問が掘り起こされたんだい?
ヴァレリー 証古学の基本は、Oral History(歴史証言)です。個人またはグループの記憶や体験を聞き取り調査して収集、保存、解釈による手法です。
証古学のほかにも、哲学、歴史学はもちろん、民俗学、人類学、社会学、文学、記憶研究、口承文化研究など多数の学問領域が再構築されています。
ハニス もっと掘り起こすとどうなんだい?
ヴァレリー それと量子論をはじめ宇宙物理学、カオス理論、複雑系学との調和も必要です。
それと証古学の作業プロセスは、その元々、歴史的出来事に直接関わった人々の生の声を記録することです。
たとえば、戦争や被差別者の声など為政者の主張と異なる歴史認識を歪められる前に記録することが必要とされる手法です。
ハニス そうなんだな。骨の折れる学問なんだなあ!
そこでだ、イプセン君がこの地球に来るって言うのだよ。ロブスター、じゃあなくてだよ。証古学によって、地球の過去の栄光の、学問の府を各地に再建築して、地球復興ばかりか銀河に普及させるっていうんだよ。
これもコンパー君からの打診に俺が考えたんだがな!
まあ、みんなミーター君とアルカディアさんからの受け売りではあるのだが!
ヴァレリー それにしても、どっからそんなお知恵が?
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