根源への旅人たち①
根源への旅人たち
第一章《星の根:アルタ・テクトニカの探求者たち》
西暦6204年。銀河評議会の命を受け、惑星アルタ・テクトニカで失われた“始原知”を探すため、二人の代表が派遣される。
一人は〈ネオ・カルヴァン主義〉の神学者レオ・ファン・ジーク。
もう一人は、〈縄文外縁共同体〉出身の女性思想探査官アオイ・ツキノ。
二人は、失われた「根源の知」の断片を巡って、争い、反発し、やがて . . . 。
【第一話:音のなき神殿】
アルタ・テクトニカ。かつて「神の初声」が響いたとされる惑星。今は誰も住んでいない。海は凍てつき、山は赤い苔に覆われている。だが、地下には確かに何かが“生きている”。
地上に降り立ったレオは聖句を唱え、アオイは足元の土に耳をすました。
「祈るのか?」アオイが問いかける。
「当然だ。われわれは天の法によってこの地を測る。創造主の意志を知るために」と、レオ。
「土は何も“法”なんか求めていないよ。ただ、そこにあるだけ」
アオイの声は、風とともに凍原に消えた。
二人は地下遺跡に入る。暗闇のなか、記録石板に文字が浮かび上がる。だがそれはどの言語でもなかった。
「言葉が . . . 溶けている?」
レオは困惑し、アオイは微笑んだ。
「言葉の前にあった“感応”だよ。あたしの部族では“カナヨリ”って呼んでる。言葉じゃなく、震えで伝える思想の形」
「そんな曖昧なものを、どうして信じられる?」
「逆に訊く。君の“明晰な言葉”は、いまここで何を読み取れる?」
言葉は、読めなかった。だが、二人の脳に―共通した音のない“旋律”が響きはじめる。
次話につづく . . .
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