東方の3賢人

銀河のこよみ

東方の3賢人

 一説によれば、幼い聡明なマタイは、ある晩バビロンの三人のマゴイ(占星術師、賢者)の夢を視た。
 マタイとは、新約聖書の冒頭、『マタイによる福音書』を書いた使徒マタイです。

 野心一杯の若者メルキオール、父ちゃんの財産を新世界の救いのために使おうと、そのためには学問の先生を見つけようとバビロンに向かった。先生の名はバルタザール。彼は若いときはアロマオイルで財をなした。漸く、夜の星空に不思議な光の行方を突き止めた。それを聞いたバルタザールの先生カスパール。ヨボヨボでも弟子について行くぞと捲し立てた。よわったバルタザールは元気な青年メルキオールを誘った。万一の場合は君が年寄りを担げ、と。
 旅の途中、導きの星がいっそうの輝きを増し、突然止まった。カスパールは悟った。「既に生まれ出た幼子はその命を我々に下さる」と。星は時間を超え、空間を超え、人の世の全てを拭う、と。「わしは若いとき、葬儀屋で財をなした。わしの生命の換わりに『世の命の全て様』に没薬を捧げるのだ」と。

 ちなみに、わたしのSF、『2万年後の銀河』シリーズに出てきますハリ・セルダンが構想し、ガール・ドーニックが活躍したムラサキにけむる涯(さいはて)の惑星ターミナスをラヴェンダーの星とわたしは名付けました。
 ご存知のように、人間の視力でとらえられる可視光のなかで一番波長が短いのがムラサキです。
 アイザック・アシモフはよくぞその惑星をターミナスと名付けたものです。
 天の川銀河で最も敬遠された惑星。
 しかし、ラヴェンダーは、別名、「別紫蘇」(もう一つの紫蘇)と言われます。
 「ムラサキによみがえる」という意味です。
 譬えば、イエス・キリストは、「家造りらの捨てた石が、隅の頭石になった」と詩篇の118篇の22節を引用して、神の国の現実を述べられているのは意味深いものがあります。
 我が国では、あの聖徳太子の色彩として珍重されて参りました。
 わたしは、さらに欲張って、あのバルタザールにしたがって、ムラサキの薫りをクリスマスに味わって、冬至の時期を潤い良き、ターミナス(折り返し地点)にしたいと願っております。
 
 
yatcha john s.  「東方の三賢人」

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