第5話 ヘリオス・ガイア
第1弾 アーカイヴの舟
第一部 ノヴェル・ミライのエアルト探索
「文明は、星ではなく“思想”によって生まれる。」
もし、惑星そのものが「生命」だったとしたら―文明はどう変わるのか?
ノヴェル・ミライは、ようやく完成したばかりの高性能データロボットに問いかけた。容量は従来の十万倍。あらゆる記録を収められる、新たな相棒である。
「エンスノヴィ、リリナスの基本情報を頼む。」
次の目的地は、ラムダ・グリスの故郷、惑星ヘリオス・ガイアだった。
なぜ、あの比類なき思考者がその星で生まれたのか。その理由を探れば、避けがたい暗黒時代の先に広がる、新しい文明像を見出せるかもしれない。
それに―ノヴェル・ミライの思考回路には、消えない引っかかりがあった。
ラムダ本人にも、そして彼の家族にも、取り返しのつかないことをしてしまったからだ。
さらに、ヒュー・ドナック。
彼はいまごろ、惑星ナックセル発リリナス行きの定期便に乗っているはずだった。学会から突然姿を消したことは、多少の混乱を招いたに違いないが。
しかしミライは、彼のバッグに多額のクレジットを忍ばせ、家族にはそれとなく説明が通る言い訳を用意していた。
データロボット―Q・リッチー・エンスノヴィが応答する。
「惑星ヘリオス・ガイアは、その質量が惑星ナックセルより約1%小さいため、農業は主として屋内水耕栽培に依存しています。特に嗜好植物の栽培が盛んです。
……また、初期移住者の多くは、惑星エアルト時代の物理生物学者、ジェームズ・ラブロックの思想を信奉する〈ヘリオス主義者〉でした。彼は、惑星全体をひとつの生命体とみなしました。」
そういえば―
ラムダ・グリス自身も、水耕農家の出身だと語っていた。
ノヴェル・ミライは、静かに内部冷却を一段階落とした。
「またしても……ヘリオスか」
つづく . . .
○ 極短要約
ミライはヘリオス・ガイアへ――ラブロック思想が導く文明の核心へ迫る。
○ 前話要約
封じられた才能と動き出す運命。ノヴェル・ミライはヒュー・ドナックを導き、静かに計画を進めていた。
○ 次話予告
ヘリオス・ガイアで明らかになる“生命としての惑星”。ラムダ・グリスの思考の起源に、ミライは何を見るのか。
○ 問い
あなたは、惑星を「生命体」として捉える思想に賛成しますか?それとも危険だと思いますか?
○ ハッシュタグ
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○ 語彙解説
□ ヘリオス主義:惑星全体を一つの生命体として捉える思想体系。環境・生態・文明を統合的に理解する立場。
□ 水耕栽培:土壌を使わず、栄養液によって植物を育てる農業技術。閉鎖環境型惑星で発展しやすい。
□ガイア的発想:生命と環境を分離せず、相互作用する一体的システムとして捉える考え方。
□ 内部冷却:高次思考体(AI・強化人間など)が負荷制御のために行う自己調整機構。
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