32. 三人のジータ

アーカイヴの舟
  1. 三人のジータ
    《アーカイヴの舟》

 経緯――英雄シェーン・エコーの娘はジータと名づけられ、女系の初代リセルを自称していた。その頃、シェーン・エコーに協力した惑星マネルラの旧貴族オラム・バナーの娘もまたジータといい、惑星スミルナのアグロフォレストリーに関心を寄せていた。一方、惑星リリナスのコンシューアム(精神感応集団)、プルプラ家にも大望の女子が生まれ育っていた。この娘もまた、不思議なことにジータと呼ばれていた。

     *

「会えて嬉しいですよ、ジータ・エコーさん」

そう言って微笑んだのは、惑星マネルラの貴族の血を引く女性、ジータ・バナーだった。

「私もジータなの。ジータ・バナー。あなたよりはずっと年上ですけれどね。短い手紙しか差し上げられなかったのに、よく来てくださいました」

迎えられた若い娘――リセルの家系に連なるジータ・エコーは、はにかむように答えた。

「どういたしまして。アルシアおばあちゃんが『行きなさい』って言ってくれたんです。私も惑星マネルラに一度来てみたかったので。父もよく話していました。マネルラにいい人がいたって――あなたのお父様、オラム・バナーさんのことです。今はその息子さん、あなたのお兄様スノー・バナーさんが、このホレル星域の総理大臣でいらっしゃるのですね」

バナーは静かにうなずいた。

「それを言うなら、あなたのお父様、シェーン・エコーさんこそ、アーカイヴ全域の人々にとって英雄と呼ばれるべきお方ですわ。お父様にもいつかお目にかかって、直接お礼を申し上げたいと思っています」

彼女は一呼吸置き、エコーの顔をまっすぐに見つめた。

「けれど、あなたは決してお父様の単なる代理人ではありません。私には二つの理由があって、どうしてもあなたご自身に、個人的にこの惑星マネルラへおいでいただき、お願いしたいことがあったのです」

バナーは指を一本立てた。

「一つ目は――この星に、あなたのおばあ様アルシアさんが始められたアグロフォレストリーを導入したいのです。その第一人者であるあなたから、能力と知識を学ばせていただきたい」

そして、もう一本の指を立てる。

「もう一つは、もっと個人的なことです。かつてこの星で内乱が起きたとき、私の家族は散り散りになりました。滝から身を投げたあの瞬間、ある女性が突然現れて、私を救い出してくれたのです。まるで、落下していく私を素手で受けとめてくれたかのようでした。その方が、私を惑星リリナスまで連れて行ってくれたの。ただ『ドーラ』とだけ名乗って、また忽然と姿を消してしまわれたのですけれど。そのあと、ある家族が私を引き取り、育ててくださいました。その家族の娘さんが、今この家にいらしているの。ご紹介しますわ」

バナーは扉のほうへ視線を向けた。そこには、もう一人の若い娘が静かに佇んでいた。

「そのご家族の娘さん、ジータ・プルプラさんです。あなたと同い年くらいかもしれませんね」

三人のジータは、互いに顔を見合わせた。

――続く。

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